「なぜこの瞬間に生きているのか」
オンリーワン!薩摩川内のカッパ画伯が伝えたいこと
薩摩川内市のとある喫茶店に飾られるいくつもの「カッパ」の絵。ある日そこで出会ったのは長身で風格のある男性。恐る恐る隣のカウンター席に腰を下ろすと、店主が「この方がこのカッパの絵を描いている方よ。」と一言。その男性の見た目とは裏腹に、ユーモアなジョークが添えられた「カッパ」の絵はクスっと笑わせてくれる。筆者が偶然出会った、【薩摩川内のカッパ画伯】とは。
薩摩川内市若松町にある「喫茶 散歩道」には、いくつもの「カッパ」の絵が飾られている。
薩摩川内市は「カッパ伝説」の残るマチ。
商店街や公園には至るところに「カッパ」のオブジェがある。
また、薩摩川内では「カッパ」を『ガラッパ』と呼び、その名にちなんだ焼酎も販売されている。
▼GARAPPA #01 CRAFT GIN
(「駅市 薩摩川内」)
https://www.satsuma-godai.co.jp/products/garappa-01-craft-gin/
そして、この喫茶店に飾られているのは、筆者がイメージしていた「カッパ」の姿とは程遠い、なんとも可愛らしい「カッパ」の絵である。
真っ白な色紙に、筆ペンの緩やかな線で描かれたカラフルで明るい雰囲気の「カッパ」。
流麗な筆運びによって書かれた一言も添えられている。
『今日も感謝』
まんまるのうるっとした瞳がより可愛らしい。
しかし、筆者はこの絵たちを「カッパ」だと思っていなかった。
ご覧の通り、あまりにも可愛らしい姿だったからだ。
「カッパ」だと知ったのは、喫茶店の店主から話を聞いてから。
と同時に、【薩摩川内のカッパ画伯】はこの喫茶店をよく訪れることを知った。
いつかこの場所で会えるかもしれない、と密かに期待していた。
ある日の休日。
何気なくこの喫茶店に立ち寄ると、細身で大柄な男性がカウンターで珈琲を飲んでいた。
緊張しながらカウンターに腰を掛けると、店主が「この方がカッパの絵を描かれている方だよ。」と紹介してくれた。
筆者はとても驚いた。
いかにも謹厳実直そうな男性は、あの可愛らしい「カッパ」を描く、【薩摩川内のカッパ画伯】だったのだ。
(【薩摩川内のカッパ画伯】篠原さんの画材道具一式が入ったバッグ)
名前は、篠原和男さん。
普段は、市の監査委員として勤務。
職業と風格からは、やはりあの可愛らしい「カッパ」を想像しがたい。
しかし、目を合わせるとなんとも優しそうな笑顔で話しかけてきてくれた。
そして、出会って数十分も経たないうちに、「カッパ」の絵をプレゼントしてくれた。
「カッパ」と干支がコラボ。2022年の寅年にピッタリの、
『笑っとら』
特徴的な筆づかいで描かれる「カッパ」の面影を残しつつ、「トラ」の要素が加わった1枚。
やはり、表情はにっこりとしていて、とても可愛らしい。
『笑っとら』の下に書かれているのは、「冠岳の杜山頭遊」。(篠原さんの筆名)
そして、気がつくと【薩摩川内のカッパ画伯】、篠原さんに人生相談を持ち掛けていた。
▼「全国カッパサミット」の歓迎の絵。(ホテルグリーンヒルロビーに展示)
(縦3メートル、横4メートル)
――私、本当に物事の捉え方がネガティブなんです。何事もマイナスに受け取ってしまって悩みがつきないんです。
篠原さん:『それはね、考え方を変えてごらん。私たちは生かされているんだと。』
――「生かされている」ってどういう意味ですか?
篠原さん:『私たちは先祖数億人の命が繋がれて、今を生かされているんだよ。家族、親、兄弟、友達、職場の同僚にお世話になりながらね。だから、腹の底から「ありがたい」という気持ちを持つことが大事なんだよ。』
――確かにそうですね。
篠原さん:『自分中心にあれもこれもと欲のままに考えていると、深く落ち込んでしまうかもしれないけれど、私たちは生かされているんだと考えれば、悩むこともないんだよ。』
――確かに、ネガティブに考えてしまうのは自分を中心に考えてしまっています。
篠原さん:『出会う人出会う人に、「ありがとう」の気持ちで、最高の喜びを感じながら生きることが大事だと思うよ。笑顔でいることと他人のために尽くすことで、今を生きる意味が分かるんじゃないかな。』
――なるほど。「生かされている」ことに感謝しながら他人に尽くすことで自分の幸せに気がつくんですね。
篠原さん:『そうだね。「なんて不幸なんだ・・・」と思うことがあるかもしれないけれど、私が思う不幸な人とは、暇な人、欲深い人、自分をどん底まで追い込んだことがない人、周りの人、ご先祖様に生かされていることに気づかない人かな。でも、そんな私もまだまだダメ人間なんだけどね。なぜなら「親不幸」ものだから。』
――私もです・・・。
篠原さん:『そうかそうか。じゃあ、私が元職場の女性職員に「ボーナスをもらったので、母を温泉旅行に連れていきます」と言われたときに、紙切れに書いて渡した文をあなたに教えようかな。』
『ありがとう』
おとうさんおかあさんの足の裏をもんでください。
今まで苦労された年月が、足の裏に残っています。
お世話になったおとうさんおかあさんの足をもむことによりありがたみを感じると思います。
またおとうさん・おかあさんがあなたの成長を感じると思います。
この子を産んで育ててよかったと・・・・・・・・
親に感謝・・・ありがとうと言い尽くせないほどお世話になっている。
今回が良い機会です。
おとうさん・おかあさんありがとう。
(原文そのまま)
――いつか私もちゃんと親孝行できるように、この言葉を心に刻んでおきます。ありがとうございます!
それから間もなく談笑した後、篠原さんは珈琲を飲み干し『じゃぁ、またね。』とお店を出ていった。
【薩摩川内のカッパ画伯】は、ただ可愛らしい「カッパ」の絵を描く画伯ではなかった。
ご先祖様に「生かされている」というありがたさを、絵を描いて人を幸せにする、人に尽くすことで伝えているのだ。
だから篠原さんの描く「カッパ」は今にも飛び出してきそうなほど生き生きとしていて、見るだけで毎日を楽しく生きるパワーを与えてくれるように感じる。
また、篠原さんは大のジョーク好き。
最後に、そんな渾身のジョークをここに紹介して締めくくりたいと思う。
◎藺牟田池をウォーキングしていたら、風邪気味の白い鳥がくしゃみをしました。(は~くちょう)
◎藺牟田池の水鳥は、英語で呼ぶと来るそうです。(鴨ん・鴨ん)カモンカモン
◎藺牟田池には、ベッコウトンボがいますが、観光客は宿泊しないでトンボ帰りです。
◎お酒飲みすぎたら、胃とか肝臓に悪いそうです。のんべえさん、飲みすぎたら 胃肝臓(いかんぞう)~
◎南の国でおとうさんが、一番嫌いなフルーツがあります。それは【パパイヤ】です。
篠原さんよりコメント。
『冬に最適のジョークでした。お~さむっ』
出会う人々を「カッパ」の絵や「ジョーク」で笑顔にする、世界でもオンリーワンの【薩摩川内のカッパ画伯】、篠原和男さん。
筆者は、篠原さんにいただいた「笑っとら」を部屋に飾り、1日の始まりと終りに目を合わせる。
「笑っとら」がいつも応援してくれているように感じ、今日も笑顔で元気に頑張ったと毎日を振り返る。
ユーモア溢れる、ジョーク好きの【薩摩川内のカッパ画伯】、篠原和男さんに、皆さんもどこかでお会いできるかも。
それでは。
(取材・文/早水奈緒)
▼市役所1階売店にて「薩摩川内がらっぱ竹紙ノート」販売中
(各ページには篠原さんの作品を含む、「カッパ」の絵。)
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