薩摩川内市の高校生14名が集い、本気の大人達と共に大成功させた「高校生食堂」。学校も学年も異なる未来の大人達がどのように団結し、成功を収めたのか。また、企画・運営した大人達が本気で伝えたかったことは何か。喜怒哀楽、大奮闘した2か月。未来の大人達のキセキに密着。
▼前編
▼中編
❚ 11月16日
残り5日と迫る本番に向け、これまでの活動の反省を話し合う為、急遽HUB sautsuma-sendai cityに集合。
各班のリーダーと全体運営の大原さんを中心に話し合いが進められた。
内容は、プレオープンの反省、接客班と調理班の連携について。
具体的な解決策を全員で導いていく。
そんな話し合いの姿を見て、彼等は学校や学年を超えた“仲間”としてこの場にいるのだと改めて感じた。
そして、今まで見守っていた大人達もこの日は熱心にアドバイス。
「絶対に成功して欲しい」
「最後まで全力でやり遂げてほしい」
その目力からも伝わる大人達の本気の想い。
また、一番近くで応援してきた大人達が発する言葉一つ一つに真っ直ぐな愛情を感じた。
そして、彼等のラストスパートに拍車がかかった。
終盤では、大原さんによる提案で改めて「目標」を見直すことに。
迫る本番の成功をに向け、一致団結、モチベーションを高める為だった。
それがきっかけとなり声色も表情もパッと明るくなったように感じた。
躓いても「目標」に向かって全員で知恵を出し合い、解決することができた。
“仲間”を思いやり、助け合うことができるチームだと感じた。
また、大原さんが改めて「目標」を確認することを提案した時、大人達が口酸っぱく言っていた言葉を思い出した。
「今日の活動のゴールは?」
「この話し合いのゴールは?」
常に「目標」を設定し行動する大人達の習慣が、無意識のうちに彼等にも身に付いたのではないだろうか。
曇っていた顔は、晴れ晴れと。
抱えていた課題と向き合った数時間。
大人達からは熱い想い聞き、少し“安心”したのではないだろうか。
いつも見守っている心強い大人達の存在。
一人一人の頑張りを必ず誰かが見ているということ。
そして最後は、本番に向けて最高の笑顔でお決まりの締めの挨拶。
「おまえたち〜最高だぜ〜」
「オー!」
❚ 11月20日
「高校生食堂」本番の前日。
朝から集合し、早速取り掛かるのは約“150食分”の仕込み。
開発したメニューは、品数が多く材料もかなりの量。
調理班だけでなく、全員で力を合わせて仕込みを開始。
そして、仕込みの邪魔にならないよう、本番の意気込みを尋ねた。
【接客班】田島侑羽さん
「料理を引き立てられるような接客をして、感動を届けたいです。あと、私は検温と会計の担当なのでお客様一人一人と明るく接したいです。」
最初の頃の活動では、控えめで内気だった田島さん。
そんな田島さんが積極性を見せたのは、接客のマニュアル作りでのこと。
班で唯一、アルバイト経験のある田島さんが話し合いの中心に。
以降、他メンバーが田島さんの意見を求める場面をよく見かけた。
【接客班】内田悠藍さん
「200%の笑顔で丁寧な接客をします!」
素敵な笑顔で答えてくれた内田さん。実は、カメラマンとしても活躍していた。
カメラを手にした初めての日は、なかなか前に出て行くことが出来ず、人と人の間から伺うように撮影していた。
“唯一のカメラマン”として一生懸命に一瞬一瞬を収めていた。
その結果、班活動では「みんなの意見についていくのに必死です。」と、悩みを抱えることも。
しかし、活動の回数を重ねいつしか仲間と打ち解けあい、自分の意見も言えるように。
(写真右:内田さん)
なんだかほっこりする、温かいと感じる場所にはいつも内田さんの素敵な笑顔があった。
【調理班】瀬戸口司さん
「お客様を待たせないように、当日も仕込みを早くして、トラブルがないように美味しい料理を提供したいです。」
現在高校一年生の瀬戸口さん。
夢は、「飲食店を経営すること」。
その夢に対する気持ちがよく伝わってきた出来事があった。
「聡さん!高校生食堂とはちょっと関係ないんですけど、、」
と言って、「高校生食堂」代表で居酒屋を2店舗経営する坂口さんへ幾つか質問する瞬間を見た。
その姿に、夢に対する覇気と吸収したいという強い気持ちを感じた。
調理班では真剣に料理と向き合い、さらに、自ら仕事を見つける姿は先輩にも負けない行動力を感じた。
【調理班】野元愛未さん
「とにかく“今”を必死に頑張ります!」
瀬戸口さんと同じく高校一年生の野元さん。
実は、活動当初はある“不安”を抱いていた。
「みんな先輩だから馴染めるか分からないです、、」
「高校生食堂」メンバーでは、一年生は瀬戸口さんと野元さんの2人のみ。
野元さんが不安に思うのは当然のこと。
しかし、毎週の活動で少しずつ会話が増え、いつしか明るい笑顔が見られるように。
また、カメラを向けても下を向いていた野元さんも活動の終盤では、
「可愛くとってくださいね〜」と冗談混じりににっこりと笑顔を向けてくれた。
(写真左:野元さん)
そして、活動開始から約9時間。
ようやく仕込みの目処が立ち始めてきた。
また、隙間時間にウェルカムカードを一枚一枚手書きで作成した接客班。
心のこもった一枚に。
その後夜遅くまで仕込みを続け、解散。
いよいよ次の日、11月21日は「高校生食堂」本番。
一から創り上げてきたキセキの集大成。
❚ 11月21日
遂に「高校生食堂」開催当日。
早朝から集まった彼等は順調に準備を進めている様子。
接客班が作業しているのは、テイクアウトの「薩摩うんま鹿弁当」。
テイクアウトは、当初の予定の30食を上回る52食を準備。
そして、オープン10分前。
調理班はいよいよ盛り付けを開始。
本番への勢いを感じる慌ただしさ。
その様子を静かに見守る坂口さん。
前のめりで見守る姿は心配している様に見えるが、彼等は真剣な眼差しで確実に作業を進める。
接客班からは余裕を感じる笑顔が。
心の準備もしっかりできている様子。
テイクアウトを担当する、接客班の山本さんとプロモーション班の古賀さんもこの笑顔。
そして、開店直前。
全体運営の大原さんを中心に全員で円陣を組んだ。
大原さん:「オープンに向けて、10月3日から活動してきました。その結果が今日表れる日です。絶対良い評価をもらえると思うので、みんなで協力して頑張りましょう!」
全員:『はい!』
大原さん:「緊張したら深呼吸をしましょう!」
全員:『はい!』
大原さん:「おまえたち〜最高だぜ〜!」
全員:『おーーー!!!』
円陣で整列していたのは、準備中の調理班にエールを送るためでもあった。
そして、いよいよお客様を迎える時が来た。
接客班の中から代表の3人がオープンの挨拶。
(左から馬場遥奈さん、内田悠藍さん、島田さゆりさん)
3人:『いらっしゃいませ!』
島田さん:「本日はお忙しい中ご来店いただきありがとうございます。」
内田さん:「私たちの活動は10月3日から始まり、ようやくここまできました。」
馬場さん:「学校、学年の壁を越え、全員が一つとなり活動を通して成長することができました。」
島田さん:「本日は、最高の接客、調理を目指して精一杯頑張ります。それでは、」
3人:『高校生食堂、開店です!』
開店の挨拶を経て、店内には続々とお客様が来店。
緊張の様子はなく、笑顔でお出迎え。
わずか10分未満で、カウンター席の一番最初のお客様に料理が運ばれた。
プレオープンよりもスムーズな提供。
接客班と調理班の連携が改善され、うまくいった様子。
入り口付近では、テイクアウトの受け取りも開始。
また、外では店内を映すライブ映像も。
テイクアウトに来られたお客様も臨場感を味わいながら視聴。
そして、10時開始の1回転目。
スムーズにお客様全員に提供ができた様子。
お客様のもとに調理班メンバーの姿も。
食事を終えたお客様に感想を伺うと、
「愛情がこもっていてとても優しい味でした。最高の朝ごはんになりました!」
『本当に高校生が作ったんですよね?初々しくて一生懸命で、、頑張っている姿を見て、涙が出てきました。」
また、お話を伺った中に接客班の山本愛梨沙さんのお母様も。
『接客する姿を見て、変わったなと思いました。普段は人見知りする子なんですけど、みんなと協力して頑張っている姿を見て、新たな一面を知ることができました。』
(写真左:山本愛梨沙さん)
お客様からは多数の絶賛の声。
「美味しかった!」はもちろん、元気の良さ、笑顔に心を奪われた様子。
無事、1回転目終了。
休憩する暇もなく、30分で12時からの2回転目の準備へ。
1回転目で掴んだ流れを持続していけるのか。
慌ただしくなる調理場。
しかし、カメラに気がつくと笑顔を見せる調理班。一安心。
一方の接客班は座席のセッティング中。
前日に何度も確認していた伝票も、最後までしっかり確認。
そして、いよいよ2回転目。
プレオープンでは、オーブンの不具合により大幅に提供が遅れてしまった苦い思い出のある2回転目。
開店の3分前。
もう一度調理場を訪れると、この笑顔。
早め早めの準備で、動きにも心にも余裕がでてきた様子。
開店の挨拶をし、2回転目も順調にオープン。
入り口から見守る大人達。
そんな大人達の心配を掻き消すように、ここぞとばかりのチームワークで1回転目よりもスムーズに提供されていく料理。
常に周りを見渡し積極的に行動する接客班。
テイクアウトに来られた担任の先生の来店にも気がつき、記念撮影も。
また、笑顔で退店するお客様に感想を尋ねると、
「全部美味しかったです!マスクを付けていても、目尻から素晴らしい笑顔がよく伝わってきました!」
“未来の大人達に一言”を伺うと、
『初心を忘れず、これからも頑張ってください!今の時間を大切にすることと、何でも一生懸命にすることで道は開けると思います。笑顔で!楽しく!』
もし高校生に戻れるなら自分も参加したかったとの声も。
そして、調理班リーダーの田中深結さんのご家族も。
「とても美味しかったです。毎週頑張っていたなと思います。彼女自身は悩んだこともあったみたいですが、すごく充実していたんじゃないかなと思います。良い経験をさせてもらって本当に良かったです。」
2回転目も大成功。
大きなミスやトラブルもなく順調に進む「高校生食堂」。
提供を終え、すぐに最後の3回転目の準備を開始。
すると、坂口さんが全員を招集。
「1回転目、2回転目最高でした!次は、“最後”です。その後は解散です。“最後”までやり切って、本当の総仕上げをしていきましょう。そして、“最後”は一緒に笑顔で終わりましょう!」
坂口さんの掛け声とともにより一層気が引き締まった様子。
そして、2ヶ月間の集大成、ラストスパートの3回転目を迎える為、勢いよく持ち場に戻っていく彼等。
坂口さんの“最後”という言葉が切なくも彼等の背中を押した。
そして、無事に3回転目を迎えた。
プレオープンでは経験したことのない3回転目だったが、最後まで集中しながら安定した接客と調理を提供することができた。
退店したお客様に感想を伺うと、
「想像以上に美味しかったです!料理の説明では、一人一人アレンジが加わった説明で本当に伝えたいという気持ちがよく伝わってきました!」
また、“未来の大人達へ一言”を伺うと、
『好きなことややりたいこと、自分の人生をかけてでも貫きたい何かを見つけて、楽しんでください!しんどくても楽しむことだけは忘れないでください!』
さらに、甑島から応援にかけつけた接客兼プロモーション班の馬場遥奈さんのご家族は、
『娘がインスタグラムに投稿する活動の様子を見て、今日をとても心待ちにしてきました。接客では、言葉遣いがちゃんとしていて良い意味で“よそよそ”しかったですね。私たち家族相手にもお客さんとしてしっかり接客してくれました。料理もとても美味しかったです!』
さらに、田中良二市長からも絶賛の感想が。
『料理、デザートの提供も申し分なく、素材の味を感じながら大変美味しくいただきました。(未来の大人達へ一言は、)薩摩川内市を愛してください。今後とも未来の大人から未来の大人へと繋げていただきたいと思います。』
そして、あっという間に閉店の時間に。
感無量に浸り全てを成し遂げた表情で、店舗の外へと出てくる彼等。
堰を切って涙を流し始めるメンバーも。
本番の1週間前のプレオープンでは、失敗や反省が山積みとなり落ち込んだ雰囲気もあった。
そんな話し合いの中で、自分が発言した言葉が仲間を傷つけてしまったのではないかと不安になるメンバーもいた。
彼等が駆け抜けた2ヶ月間は綺麗事ばかりではなかった。
最初から最後まで「ずっと楽しかった」とはきっと言い切れないだろう。
しかし、活動中はもちろん、それ以外の見えない一人一人の努力によって歩幅を合わせて苦境を乗り越えてきた。
どんな状況からも逃げることなく、個人や班、全体で掲げた「目標」のプレッシャーに打ち勝ってきた。
その結果、【確固たる結束力】で大成功へと導くことができた。
❚ 11月27日
「高校生食堂」開催日から1週間後、再び集結。
最後の活動は、これまでの活動を振り返る「反省会」が行われた。
各班で反省をまとめた後は、全員で楽しく会食。
大人達も一緒に話に花が咲く時間を過ごし、一人ずつスピーチが行われた。
スピーチの内容は、
・参加したきっかけ
・良かったこと
・辛かったこと
・どのように乗り越えたか
・今後どのように活かしていきたいか
少し照れくさい表情で、改めて言葉にする本音。
参加してよかった点では、「視野が広がり、学校生活も楽しくなった」や、「自分の夢と改めて向き合う機会になった」、「挑戦することの大切さを学んだ」、「みんなと出会えたことが本当に良かった」と様々な声。
一方、辛かった点は、「土日の休みがなくてきつかった」や、「学校との両立が大変だった」などが上げられたが、全員が「参加して良かった」と締めくくった。
また、接客班でリーダーを務めていた島田さんはメンバーと大人達に一人一人感謝の気持ちを伝え、感動を呼んだ。
そして、一旦休憩の時間に。
その間に部屋を出て行く彼等。
実はこっそり“サプライズ”を企画していた。
数日後に誕生日を控えていた、坂口さんへのバースデーサプライズだった。
手作りケーキを持参し盛大にお祝い。
さらに、「大人の皆さん並んでください!」と言うと、一人一人に寄せ書きのプレゼントが。
驚きと喜びで感激する大人達。
これまでの想いが込み上げ、涙が溢れた。
そんな大人達からもプレゼントが。
それは、この活動の様子を一冊にまとめたフォトアルバム。
早速ページをめくると笑顔がさらに広がり、幸せいっぱいの様子。
そんな姿を見て嬉しくなる大人達。
温かい雰囲気に包まれた会場。
しかし、2ヶ月間続いた活動もこの日をもって終了、解散へ。
最後に代表の坂口さんからは、
『終わりよければ全てよし。そして、終わりは始まりです。何ができるか分からないけれど、何か困ったことがあった時は是非、私達大人に相談してください。そして、常に夢に向かって頑張ってください。』
活動は終了しても、出会った仲間や大人達とのご縁は末長く。
経験はこれからの人生の糧に。
最後の掛け声は全員の夢が叶うよう、天高く。
『おまえたち~最高だぜ~!』
「オーーーー!!」
このように、未来の大人達の可能性を広げた「高校生食堂」。
全体のゴール『三方よし』を掲げ、夢を持つ未来の大人と本気で何かを伝えたい大人達が互いに高め合いながら、挑戦し過ごした日々。
彼等が特別な存在に見えるかもしれないが、挑戦するかしないかの違いである。
挑戦の先には、「夢」や「目標」がある。
同志を持つ仲間がいる。
今回参加した彼等の中には「正直最初はそんなに乗り気じゃなかった」というメンバーもいた。
しかし、同じゴールを持つ仲間や大人達との出会いにより、個々の役割に責任感やプライド、やりがいを見いだし本気になることができた。
つまり、きっかけは人それぞれであり重要なのは、「まずは挑戦すること」である。そして、チームの一員として活動する心構えは、自分がどれだけ「目標」に共感して本気になれるかである。
今回の「高校生食堂」では、そんな一人一人の挑戦者の第一歩が、薩摩川内市初の試みとしての大きな第一歩へと繋げることができた。
全体のゴール『三方よし』を目指して活動してきた日々が、結果的には次の挑戦者への道筋となり背中を押すきっかけになったのだ。
挑戦することで、人はさらに輝ける。
彼等はそれを証明した。
そして、次の挑戦者へと想いは繋がれた。
喜怒哀楽、未来の大人と本気の大人が大奮闘した2か月。
「高校生食堂」未来の大人達のキセキ【完結】
(取材・文/早水奈緒)
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