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川内商工高生×出水市地域おこし協力隊【依頼者の想いをカタチに!】~コンソーシアムSHOKO~

 

依頼を受けた川内商工高生が、出水市の店舗で使用するカウンターやベンチ、椅子を製作!地域協働で本格的なモノ作りを体験!川内商工流「担い手育て」とは。

 

 

 


1. はじめに

 

『あの子たちの頑張りを見てもらえませんか?今、生徒たちが頑張っているんです。』

 

ある日、別件の取材で訪れた鹿児島県立川内商工高等学校のインテリア科・齋藤俊先生に、川内商工高校機械科の生徒7名木工同好会の生徒5名が協働で数か月をかけてある製作に励んでいるというお話を聞き、今回の取材が始まりました。

 

(木工同好会の生徒に指導中の齋藤俊先生)

 

筆者が初めて目にした製作途中の製品はこちら。

 

スツール「脚」!

 

しかし、モノ作り知識ゼロな筆者。

正直、このスツールの「脚」を見ても齋藤先生の熱い想いと同じテンションになることはできませんでした。

 

(筆者の頭の中)

どうやって作ったんだろう…

なぜ作っているんだろう…

「スツール」ってなんだろう…

(背もたれのない椅子を「スツール」と呼ぶことも初耳でした。)

 

しかし、取材を通して彼らがモノ作りに本気で取り組む姿に“職人”としてのプライドを感じ、筆者の心は強く打たれました。

 

依頼者の想いをカタチにした立派な製品

彼らの思いやりとアイデアが詰まった無二の作品

 

彼らが製作したのは、製品であり作品であると感じました。

 

機械科7名と木工同好会5名の製作活動、【川内商工高生×出水市地域おこし協力隊【依頼者の想いをカタチに!】~コンソーシアムSHOKO~】 是非、最後までご覧ください!

 

知識ゼロな筆者にわかりやすいように丁寧に説明してくれた彼らへの恩返しも込めて全力でお伝えします!

 

 

【目次】

1.はじめに

2.コラボのきっかけとは?川内商工高生×出水市地域おこし協力隊!

3.職人の卵の製作活動!

①【ベンチ・椅子】‟はかり”をモチーフに!《機械科》
②【カウンターテーブル板】100㌔の無垢材を加工!よぎる“大樽”!《木工同好会》
③バラバラの部品が一つに!カウンターテーブルを組立!《機械科》

4.贈呈式・川内商工高生から山川さんへ!

5.機械科3年・船倉小太郎くんにインタビュー!『実はめっちゃ喧嘩しました(笑)』

6.おわりに

 

 

▼出水市地域おこし協力隊・山川温子さんを取材!

「scAle(スケール)」とは?リノベーションプロジェクトとは?

 

 


2. コラボのきっかけとは?川内商工高生×出水市地域おこし協力隊!

 

川内商工高校機械科&木工同好会出水市地域おこし協力隊山川温子さんのコラボ。

一体どのような経緯があったのでしょうか。

 

 

きっかけは、リノベーションスクール@出水に受講された山川さんと川内商工高校・齋藤先生がお知り合いになられたことから。

 

その後のDIYワークショップのちょっとした休憩時間に、山川さんが手掛ける“リノベーションプロジェクト”のお話に。

そこで齋藤先生が川内商工高校の生徒とのコラボを提案し、実現!

 

川内商工高校では産学官連携モデル・地域協働で将来を担う人材を育成~コンソーシアムSHOKO~(以下、コンソーシアムSHOKO)と呼ばれる推進事業があり、今回のコラボもその取り組みの一つとして企画されました。

 

【コンソーシアムSHOKOとは】

「工業×商業(課題研究・実習)の深化・融合化」

4つの学科(機械科・電気科・インテリア科・商業科)の連携を図り、まちづくりを「ものづくり」や「マーケティング」の観点からキャリア教育を推進する事業。

地域を知る→地域から学ぶ→地域に提言→地域を支える人材育成

 

川内商工高校ではコンソーシアムSHOKO事業として様々な活動が行われています。

 

▼商業科:旅行商品を企画!

 

 

FMさつませんだいが属する(株)薩摩川内市観光物産協会(観光旅行事業部)が連携企業として、商業科の生徒と旅行商品の企画を行いました。(2022年1月21日取材)

 

今回、主に取材したのは機械科

機械科のコンソーシアム事業の活動目的は、

 

地域からの依頼品を他学科と協働で製作することで,地域貢献の意義と新たな発想・技術を学び合い,豊かな社会を創ろうとする「ものづくりの輪」を育てる。また,地域のものづくりに触れることで郷土愛を育み,地域貢献できる人材の育成を行う。

 

依頼主・山川温子さんとの交流はもちろん、学校内の他学科との協働製作で彼らはどのようなことを学んだのでしょうか。

 


3. 職人の卵の製作活動!

①【ベンチ・椅子】‟はかり”をモチーフに!《機械科》

 

製作活動が始まったのは、昨年8月後半

機械科7名の生徒が依頼者・山川さんの要望を聞き取り、約2か月をかけて構想・設計。

 

要望は‟鉄製でゴツゴツしたカッコイイ感じのデザイン”!

彼らはどのようなデザインにしたのでしょうか。

 

▼研削加工(研磨砥石を用いて加工物を削ること)

▼溶接加工(2種類以上の金属を接合すること)

 

まず、ご紹介するのはベンチ!

座面が浮いているような不思議な形をしていませんか?

 

▼ベンチ(製作途中)

(高さ700㎜、長さ1500㎜、座面の幅400㎜:12月24日撮影)

 

リーダーの船倉小太郎くん(機械科3年)に話を伺うと、

 

『お店の名前「スケール」から「はかり」をモチーフにした椅子が面白いんじゃないかと思い、このようなデザインにしました。小さなお子さんにも上りやすいように椅子の高さを調整したり、実際に座って座り心地を確認したりしました。』

 

(一つ一つ丁寧に説明する船倉小太郎くん)

(試行錯誤したことが伝わる設計図。)

 

ベンチの製作で1番こだわったという、足掛けの高さ

横から見ると「なるほど!」と理解することができます。

 

(左側にテーブルを設置し、右側から足をかけて楽々上ることができます。)

 

他人の目線に立って考えることで生まれた素敵なアイデア。

思いやり計算!!

 

▼完成したベンチ

(1月12日撮影)

 

一人掛け椅子(スツール)も“はかり”をモチーフに!

合計6脚製作!

 

▼一人掛け椅子組み立て中の様子

(1月12日撮影)

 

続いてご紹介するのは、カウンターテーブル!

 

 


②【カウンターテーブル板】100㌔の無垢材を加工!よぎる“大樽”!《木工同好会》

 

――よぎる“大樽” とは!

山川温子さんへの取材で明らかとなった、「大樽」の存在。

 

▼山川さんへの取材記事はこちらをご覧ください♪

 

「大樽」は、元お醤油屋さんの店舗でお酢づくりに使用されていたそうです。

そんな長年親しまれた「大樽」を山川さんは店舗に残したいと考えていましたが、諸事情があり一旦店舗の外へ。

 

そこで彼らは窓際カウンターテーブル“大樽がよぎる”アレンジを加えました。

そのアレンジとは…?下記の写真をご覧ください。

 

 

長さ550㎜の光沢のある板。

この板から皆さんはどのような想像をしますか?

 

よぎる「大樽」… 窓際カウンターテーブル…

 

実は、こちらの板は窓際カウンターテーブルに取り付ける、「大樽」をイメージした『前板』なのです!

 

▼窓際カウンターテーブルに設置する『前板』!

▼大樽を彷彿とさせるデザイン!(完成イメージ)

(カウンターテーブルは店舗で組み立て)

 

『前板』や『カウンターテーブル板』の木材加工をしたのは、木工同好会の生徒5名!

 

▼『前板』にウレタン塗装する様子

 

木工同好会では、2種類のカウンターテーブル板を加工!

窓際カウンター…集成材

◉キッチン前カウンター…無垢材

(※無垢材は山川さんが知人から譲り受けた約100㎏の立派な木材を加工。)

 

▼無垢材を加工したキッチン前カウンターテーブル板

 

木工同好会を代表して今西海斗くん(電気科・2年)に特に大変だった作業を伺うと、

 

『無垢材の加工をするときに、基準面をつくるのがとても大変でした。表面を約1㎝削って平らになるようにしました。また、ひび割れが広がらないようにするチギリもピッタリあうように作りました。』

 

基準面…木材のねじれや反れをなくし、水平で垂直な面をつくること

 

▼キッチン前のカウンターテーブル板

(真っすぐすぎて撮影に苦戦!)

 

また、1学年上の先輩(機械科)との協働での製作について伺うと、

 

『3年生に1番良い状態で渡したいと思っていました。本当に仕事を受けている感覚で、一生懸命やりました。これから専門だけでなく、塗装や製作もうまくなって色々できるようになりたいです。』

 

と、責任感とプライドを感じる力強いコメントが返ってきました。

技術だけでなく、モノ作りの心構えも兼ね揃えた頼れる木工同好会!!

 

▼0.3㎜のズレも許されない!ひび割れ防止の「チギリ」!

(繊細な技術が必要な「チギリ」は治具という道具を使って製作。)

 

続いては、木工同好会が加工したテーブル板を使用して、機械科がカウンターテーブルを組立!

 

 


③バラバラの部品が一つに!カウンターテーブルを組立!《機械科》

 

機械科と木工同好会の協働製作!

別々の作業場で製作し、一つの製品になる瞬間をご紹介します。

 

▼まずは、テーブルの「脚」パーツをボルトで締めて一つに!

(▼ちょっと心配になるほどの一生懸命さ!)

(▼持ち上げ作業も息ピッタリ!)

▼続いて、テーブル板を取り付けます!

▼みんなで上を押さえ、テーブル板の下で作業中…

▼木工同好会が製作した、2つの板をボルトで引き寄せて連結させる仕掛け!

▼2つの板の境目がわからないほどピッタリ連結!

▼テーブル脚には、高さ調整ができる『アジャスターボルト』を使用!

▼がたつきのない仕上がりに!

 

▼完成!!!!

(1月12日撮影)

 

ご覧の通り、とってもカッコイイ仕上がり!!

筆者も一足先に座らせていただきましたが、椅子の足を置く位置も、机との高さのバランスもちょうど良かったです!

 

落ち着いたカラーでマットな質感の「脚」は、クールで品のある雰囲気。

特に椅子・ベンチは想像以上に座面が広く、荷物が多い筆者でも安心してゆったりと座ることができました。

 

8月後半から活動が始まり、約5カ月をかけて遂にカタチとなった製品。

続いては、組立から1か月後!山川さんへの贈呈式の様子をご紹介!

 

 


4. 贈呈式・川内商工高生から山川さんへ!

 

2月14日、川内商工高校校長室にて『コンソーシアムSHOKO事業における依頼品の贈呈式』が行われました。

 

 

【帆西弘幸校長のコメント】

『このような機会をいただいて大変ありがたく思います。出水市で実際にお客様に使っていただくということで、生徒たちにとっては真剣味が培われたのではないかと思います。今後とも山川さんや地域の方々と連携した活動ができれば幸いです。』

 

 

リーダーの船倉小太郎くんが、『たくさんアイデアを出して作ったので、大切に使っていただけると嬉しいです!』と、言葉を添えて目録を進呈。

 

 

【出水市地域おこし協力隊・山川温子さんのコメント】

『今回、無理難題をお願いしたと思うのですが…「授業の一環で取り組む」や「課題のためにする」という感じではなく、皆さん一人一人が「職人」として自分たちの知識を出し惜しみすることなく仲間と一緒に取り組んでくださってとても感動しました。大切に使わせていただきます。本当にありがとうございます。』

 

▼贈呈式終了後、記念撮影!

 

その後、全員で移動!

いよいよ、山川さんに製品を初お披露目!!

 

 

▼山川さんへの製品お披露目の様子はこちらの記事で♪

“カッコイイ!完璧!男前デザイン!”絶賛の山川さん!

 

 

最後に、機械科を代表して、リーダーの船倉小太郎くんに約半年間の活動を振り返っていただきました!

 

 


5. 機械科3年・船倉小太郎くんにインタビュー!『実はめっちゃ喧嘩しました(笑)』

 

約半年間、課題研究の授業時間や放課後を使って取り組んだ製作。

リーダーの船倉くんは何を感じ、何を学んだのでしょうか。

 

 

――半年間を振り返って、リーダーの船倉くんはどんなことを学びましたか?

 

船倉くん:『人の個性を知りました。一人一人、得意・不得意な作業があって十人十色だなって思いました。』

 

――なるほど。仲間の得意・不得意はどうやって見極めましたか?

 

船倉くん:『最初に班分けをして作業の様子を見て、集中しているかしていないかで判断していました。集中できてないなって思ったときは、持ち場を交代して、できるだけ作業に集中できるようにしました。』

 

 

――普段の授業と今回の製作活動、どのような違いがありましたか?

 

船倉くん:『授業では言われたことをただやるって感じだったんですけど、今回は要望に合わせて自分たちが知らない技術を学んで、さらに応用させた方法で製作することが多かったです。溶接も細かいところまで綺麗に仕上げられるように心がけました。』

 

――プロの意識というか、「仕事」として半年間活動してきたんですね。

 

船倉くん:『アルバイトで“職人の気持ちを持って常に良いものを作り上げられるように”と心がけているので、今回も常にその気持ちで活動してきました。』

 

 

――素晴らしいですね!では、これまでの学びを今後どのように繋げていきたいですか?

 

船倉くん:『自分は進学をするんですけど、これからも幅広い知識を身につけてモノ作り関係の仕事に繫げていきたいです。他メンバーも、一人一人目標を掲げて経験を活かせることができたら良いなと思います。』

 

 

――では、最後に何か船倉くんから伝えたいことはありますか?

 

船倉くん:『実は、めっちゃ喧嘩しました(笑)』

 

――えぇ!!そうだったのですね!(笑)

 

船倉くん:『もうちょっと積極的に参加してほしいとか、今日はもう少し残って作業してほしいとか、色々ですね(笑)花田先生から怒られて気づくこともありました。なので自分が厳しく注意したり、ときには自分で考えろって強く言ったりしたこともあります。』

 

――今はとっても仲良しで、安心しました。無事、製品を完成させることができてよかったですね!お話し聞かせてくれてありがとうございました!

 

▼製作を見守る齋藤俊先生(左)、機械科・花田隆生先生(右)

 

最後の一言で、筆者は彼の本音を聞く事ができました。

『実は、めっちゃ喧嘩しました(笑)』

 

でも、その一言で彼らの今回の製作に対する真剣さがより伝わってきました。

 

仲間が嫌いだから喧嘩するのではなく、“7人で山川さんに喜んでもらえる製品を作りたい”、“中途半端は許せない”、そんな素直な気持ちが伝わってきました。

 

信頼できる仲間だからこそ本音をぶつけ、製作期間の6か月間を本気で取り組み続けることができたのではないでしょうか。

 

(左上から)轟木聖也くん 大久保志晏くん 潟山健仁くん 鶴田織大くん(左下から)船倉小太郎くん 児玉駿斗くん 蒲谷快斗くん

 

 


6. おわりに

 

最後に、筆者が取材を終えて感じたことをまとめて締めたいと思います。

 

 

最後の組立の場面でも気を抜かず、部品やパーツを慎重に慎重に扱う姿。

ちょっとでもリスクがありそうな運び方はせず、遠回りをしても安全なルートで製品を運ぶ姿。

 

たった数回の取材の中で筆者が強く印象に残っている瞬間です。

 

製作期間の半年間、大人のプレッシャーにも負けず一人一人が製品に対して真摯に向き合い続けてきたことを感じました。

 

 

要望に応えるだけでなく、彼らにしか生みだせないアイデアと製品を利用する人を思いやって製作した《カウンター・ベンチ・椅子》。

 

だからこそ、依頼者の想いをカタチにした立派な製品であり、彼らの思いやりとアイデアが詰まった無二の作品なのです。

 

今年夏オープン予定の「scAle」で、皆さんも是非彼らの作った製品、作品に触れてみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました!

 

出水市地域おこし協力隊・山川温子さんへの取材記事はこちらをご覧ください。

(川内商工高生ももちろん登場!)

 

 

それでは!

 

 

(最後の取材日は「バレンタインデー♡」でした♪)

 

(2022年12月~2月 取材:早水奈緒)

 

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