|はじめに
先月28日、新田神社で「御神鏡清祭(みかがみすましさい)」が行われました。
今回はその様子をリポートします。
と、スムーズに書き始めたかったのですが…
銅鏡とは…
現代の「鏡」とどう違うのか…
なぜ新田神社に所蔵されているのか…
なぜ、園児たちが磨くのか…
正直に申しますと、今回の筆者は「御神鏡清祭」がどのような神事なのか、詳しくは存じ上げていませんでした…。(歴史の勉強がダントツで苦手だった筆者です…。)
という訳で…
筆者目線ではありますが、「分からない」を追求しました!
「御神鏡清祭」をご存知ない方、ぜひ最後までご覧ください。
そして、既にご存知の方にも、毎年の恒例行事の記事として読んでいただけると嬉しいです。
それでは!
一つ一つ疑問を解いていきましょう!
【目次】
|「御神鏡清祭」とは
新田神社で毎年7月28日に行われている、古くから伝わる銅鏡の鏡面を磨く神事のことです。全国的にも大変珍しいと言われています。
|「御神鏡清祭」の流れ
まず、宝物殿から銅鏡が出され、祭典が行われます。その後、みくに幼稚園・みくにキッズ保育園等の園児たちが「タワシ」を使って鏡面を磨き清めます。「タワシ」で磨いた後は、さらに「和紙」で磨き上げ、また宝物殿に収められます。
|「タワシ」とは
普段、見かけるあの“タワシ”とは全くの別物です。銅鏡を磨くために使われる「タワシ」は、長さ7~8cmほどの縄をひねった特別な「タワシ」のことを意味します。
|園児たちが磨く理由
それはこの祭祀に込められた願いが関係しています。園児たちが銅鏡を磨くのは、無病息災と鏡のように曇りのない心の澄んだ健やかな子に育つようにと願いが込められているからなのです。また、園児たちは、磨き終えた「タワシ」を「和紙」で包んでお守りとして持ち帰ります。
|新田神社に所蔵される銅鏡とは
全部で73面の銅鏡が所蔵されています。
【銅鏡の種類】
・日本製の和鏡…37面
・海外※1から伝来したとされる舶来鏡※2…36面
※1=中国大陸,朝鮮半島,東南アジア方面
※2=外国から渡来した鏡のこと
日本製の和鏡は、3面が国の重要文化財に指定されています。一方の舶来鏡の大半は湖州鏡で、外国製の銅鏡が多い点が特徴です。
|国指定重要文化財の銅鏡とは
〇花鳥文様(かちょうもんよう)鏡
…「永仁二年(一二九四)三月十八日左衛門尉友俊施入之」の銘があり、推定で鎌倉時代後期に作られたと見られます。
〇秋草蝶鳥(あきくさちょうちょう)鏡
…表面の模様が藤原鏡とよく似ていることから、鎌倉時代後期~南北朝時代初期に鋳造されたと推定されています。
〇柏樹鷹狩(はくじゅたかがり)鏡
…三面の中で最も厚さのある銅鏡。こちらも藤原鏡の特徴を捉えていて、推定で南北朝時代に作られたとされています。
(国指定重要文化財の銅鏡)
|外国製の舶来鏡の大半である湖州鏡とは
中国の宋代に、湖州という地で鋳られた銅鏡で、鎌倉時代に渡来したとされています。鎌倉時代は、今から800年以上昔。その時代に渡来した銅鏡が残っているのです。
|なぜ、舶来鏡が多いのか
日本と中国の距離が近く、昔から交流がありました。そして、新田神社の神宮や武士、貴族、そして川内川の水運に従事する人々が奉納したものと言われています。
|銅鏡の役割とは
「銅鏡」には、現代人が使うガラス製の「鏡」とは異なる役割がありました。それは、祭具としてや、魔除け・まじないとして、または依り代として扱われていたのです。また、リーダーの権力を示すための持ち物として、剣や勾玉(まがたま)と一緒に祭祀に使われていました。
銅鏡、剣、勾玉と言えば…歴史の授業でも出てきました!
「三種の神器」!
天皇家に受け継がれてきた宝物のことを意味し、八咫鏡(やたのかがみ)、草薙剣(くさなぎのつるぎ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)の三つが皇位を表します。
|銅鏡の使い方
新田神社に所蔵される銅鏡の多くに、銅鏡の縁に「孔」(穴)が開けられていることから、「懸仏(かけぼとけ)」つまり依り代として祭祀に使われていたと考えられています。(依り代とは、神霊が宿る憑依物のこと。)川内川の水運に関わっていた人々は、航海の安全を祈願し奉納していたと伝えられています。
|お正月の〇〇、実は…
実は、お正月に必ず目にするあるものが銅鏡と深く関係しています。
それは…『鏡餅』!!
銅鏡のように、『鏡餅』は年神様の依り代として飾られていたのです。
調べれば調べるほど奥深く、歴史を学ぶのはこんなにも楽しいのか!と一人感動している筆者です。皆さんもぜひ『鏡餅』について調べてみてくだい。
▼筆者おすすめ
『鏡餅』について学ぶことができます!
【日本鏡餅組合HP】
http://www.kagamimochi.jp/index.html
(鹿児島県神社庁の公式キャラクター「たのかん坊」くんも一緒に磨きました。)
|まとめ
このように『御神鏡清祭』は、全国的にも大変珍しい神事として新田神社で毎年開催されています。参加するみくに幼稚園・みくにキッズ保育園の園児たちは、無病息災・鏡のように曇りのない心の澄んだ健やかな子に成長するようにと願いを込めて、磨き清めます。そして、使ったタワシを和紙に包み御守りとして持ち帰ります。そして、この神事の日にだけ特別公開される国指定重要文化財も見ることができます。
銅鏡には先人が依り代として大切に扱ってきた深い歴史があり、その歴史を知ることは当時の外国と日本の交友関係を知ることにも繋がります。さらに、銅鏡がどのように使われていたのか、その意味を知ることで現代に残る風習に気づくことができます。
この神事を、そして歴史を、後世に受け継ぎこれからも繋いで行けることを願います。
いかがでしたでしょうか。
新田神社で毎年行われている『御神鏡清祭』についてでした。
ここから先は筆者の余談です…。
私は歴史の授業が本当に苦手でした。太字で書かれた重要語句をひたすら暗記する作業が好きになれなかったからです…。しかし、このように実際に目で見て体験して、調べていくうちに歴史を学ぶことの面白さを感じることができました。新しいものばかりに目を向けるのではなく、当たり前の日常生活の中の「なぜ?」を追求することで、先人たちが築いてきた歴史を知ることに繋がり、日々の大切にしなければならないことに気づかされました。
この機会にご自宅の「鏡」を綺麗にしみてはいかがでしょうか。私は綺麗にしました!
”明鏡止水”な心で日々を送ることができれば、日常はもっと充実するかもしれません。
薩摩川内市に住む一市民としてこの街の歴史を知り、深く学び、伝えていきたいと思います。
ここまでご拝読いただきありがとうございました。
以上、新田神社『御神鏡清祭』についてのご紹介でした。
それでは!
(みくに園児さんと一緒に♪)
(2021年7月28日取材)