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『昭和レトロ』母娘で地域密着のカフェ開業へ!【築50年の空き家を再生!】

 

“戸もあけっぱなしで寝よった時代”、「昭和」の面影を感じるどこか懐かしい「レトロ」な空間を目指して。

 

川内駅から車で約30分。温泉で賑わうまち日置市東市来町「湯之元」に、来年4月頃オープン予定のカフェ『昭和レトロ』。母・大畑敬子さんと娘・みゆきさんの母娘で、今年6月より知人の力を借りながら“築50年以上”の空き家をリノベーション。目指すのは年代を問わず、誰もがいつでもふらっと立ち寄れる地域密着型のカフェ。

 

【目次】

◆定年退職を迎える母の夢、「カフェ開業」娘と歩む第二の人生

  1. 母娘で開業、その理由とは
  2. なぜ「空き家」を選んだのか
◆開業資金はすべて自主財源。空き家を「カフェ」へ
  1. 工事費用は?
  2. 昭和レトロな空間づくり
◆ただの「カフェ」じゃない、多様な過ごし方ができる場所
  1. 動物愛護チャリティー
  2. 雑貨・アクセサリー販売
  3. ワークショップ
◆おわりに
  1. 昭和レトロ大畑親子と出会って

 

 

 

 

◆定年退職を迎える母の夢、「カフェ開業」娘と歩む第二の人生

 

1.母娘で開業、その理由とは

――まず、なぜ「カフェ」を始めようと思ったのですか?

 

敬子:「私が昔から接客の仕事をしてみたいなと思っていたんです。来年、定年を迎えるのでタイミングが良いなと思い決意しました。お店づくりは初めてでド素人ですが、お店をやりたい気持ちは人一倍持っています!」

 

――親子でしようと思われたのは何か理由がありましたか?

 

敬子さん:「私も娘もシングルマザーなんです。私は今の介護職を15年、その前はダンプ運転手を15年、派遣会社等でも働いてきました。長年、仕事と子育ての両立で苦労してきたので、娘には自分と同じような働き方は絶対にしてほしくなくて。なので、仕事も家庭も両立できて地域の方々との交流もできるカフェ、そんな温かい場所をつくりたいなと思ったんです。それが親として最後の仕事かなと。」

 

――素敵ですね。みゆきさんはどのようなお仕事をされてきたんですか?

 

みゆきさん:「飲食店で10年ほど働いてきました。実は、この空き家は私が元々働いていた店舗でもあるんです。」

 

――そうだったのですね!ここは馴染みのある空き家だったのですね。

 

 

 

2.なぜ空き家を選んだのか

――地域の方々と交流できて、働きやすい環境を整えることがカフェ開業の理由ということでしたが、なぜ空き家を活用されようと思ったのですか?

 

みゆきさん:「物件を探しているときに、大家さんから相談を受けて。この空き家の不法投棄されるごみの処分に困っていると。それでごみの処分を引き受けて、格安でお借りすることになりました。」

 

(写真左:敬子さん、写真右:みゆきさん)

 

――不法投棄された空き家の片づけは大変だったのではないですか?

 

敬子さん:「とても大変でした。店舗の工事前に、まずはごみの撤去から始まりましたね。でも、撤去作業を始めたころからよくご近所の方が声をかけてくださるようになって。「綺麗にしてくれてありがとう」と感謝の言葉もいただきました。とても大変でしたが、地域の皆さんと交流するきっかけにもなりました。」

 

▼不法投棄されたごみ(写真提供:みゆきさん)

 

――地域の方々にとって迷惑だった場所が、楽しみな場所へと変わったんですね。

 

みゆきさん:「これから空き家の活用を広めたいです。この辺りは空き家が多くて、人通りも少ないんです。それに、地域の人との交流もなかなかないので、『昭和レトロ』がお年寄りの方々と若者の交流の場になってほしいなと思います。『あれ、最近〇〇さん来ないね。元気かな?』と、ご近所さんを気にかけられたりするような場所にしたいです。」

 

敬子さん:「空き家がごみ置き場になる前に、若い方に活用してもらって町が少しでも賑わえば良いなと思います。また、今回私たちは自主財源ですが、補助金の制度もあるみたいなので、若者にとっても始めやすい申請の仕方やルールを分かりやすくしてほしいなと思います。」

 

▼工事が始まってすぐ(写真提供:みゆきさん)

▼家電やカウンターが取り除かれ広くなった店内

 

近所の方の声:「本当に感謝しています。この通りの景観も良くなって。工事の合間に店舗の中を見せてもらって、はやく完成しないかなと心待ちにしています。」

 

▼優しい光が差し込む日当たりの良い2階(工事前)

▼2階工事中(12月)

▼2階から外を眺める敬子さん

 

 

 

◆開業資金はすべて自主財源。空き家を「カフェ」へ

 

1.「空き家」再生の工事費用は?

――ごみの撤去を終えて工事が始まっていますが、費用はかなりかかるのではないですか?

 

みゆきさん:「工事はすべて知り合いの大工さんに協力していただいています。私たちの想いに共感してくださって、休日を返上して工事を進めてくださっています。」

 

敬子さん:「ごみの撤去作業から数えると、10数名の大工さんや塗装屋さん、タイル屋さんに協力していただいています。本当に感謝しかないです。」

 

▼(写真提供:みゆきさん)

 

――では、かかる費用は材料費だけですか?

 

敬子さん:「そうですね。でも、できるだけ廃材を活用しているので材料費も抑えられている方だと思います。ちなみに、こちら側の壁はタイル屋さんがタイルを貼ってくださいました。」

 

 

――壁も床も張り替えられていますよね!あと階段も!!

 

みゆきさん:「階段も大工さんに作っていただきました。建物が相当古いので、安定したものにしないといけなくて。」

 

▼急な傾斜の階段を取っ払い、「はしご」で代用(9月)

▼大工さん手作りの階段が設置(10月)

 

 

2.昭和レトロな空間づくり

――店舗の中のレイアウトも考えていますか?

 

敬子さん:「そうですね。昭和レトロな空間をつくりたいので、今、リサイクルショップを回りながら家具看板を探しています。」

 

――看板?!どのような看板を探しているのですか?

 

敬子さん:「“金鳥看板”(ホーロー看板)を探しています。入口や店内外に看板をたくさん取り付けて昭和の雰囲気を出したいんです。戸もあけっぱなしで寝よった時代“昭和”の街並みを思い出すような感じにしたくて。」

 

――なるほど!以前私がここで見た看板もすごくレトロな感じで素敵でした。ちなみにお店の手書き看板もステキですよね。

 

 

 

 

◆ただの「カフェ」じゃない、多様な過ごし方ができる場所『昭和レトロ』

 

 

1.動物愛護のチャリティー活動

――お店の完成がとても楽しみですが、カフェだけじゃないんですよね?

 

みゆきさん:「そうなんです。動物愛護のチャリティー活動雑貨販売ワークショップの企画もしていきます。」

 

――盛りだくさんですね。まずは、動物愛護のチャリティー活動について教えてください。具体的にどのようなことをされるのですか?

 

敬子さん:「動物愛護のチャリティーは、お店の売上の一部を動物保護団体へ寄付したり、ポスター掲示で地域の方々に呼びかけをしたりしていきたいです。お店の外にも看板を立てて、ポスターを掲示する予定です。少しでも『昭和レトロ』が動物愛護について興味を持ってもらえる場所なれば良いなと思っています。」

 

 

――チャリティー活動をすることについては、何かきっかけがあったのですか?

 

敬子さん:「実は、生前母が約40匹の猫を多頭飼育していたんです。『可哀想だから』と、よくネコを保護していました。そんな母の姿を見て育ったので、私も自然と動物の保護活動に興味がありました。そして、ボランティア活動に参加するうちに厳しい現実を知って、もっと多くの方に知ってもらえる場所を地域に作りたいなと。」

 

――なるほど。『昭和レトロ』をきっかけに地域の方々にとっても動物愛護への関心が高まると良いですね。

 

 

2.昭和レトロで、「雑貨・アクセサリー販売」

――そして雑貨販売もされるということで、どのようなものを販売されるのですか?

 

みゆきさん:「雑貨販売では、お母さんの作る和小物やバッグ、私が作るアクセサリーや作家さんの作品を販売したいと思っています。それぞれ作るもののジャンルは全然違うんですけど、一つの空間で販売することで違った良さを感じていただけると思います。私はお母さんが作る“一貫張り”を若い人たちにも知ってもらいたいなと思っています。」

 

――“イカンバリ”?!・・・とはなんですか??

 

敬子さん:「“一貫張り”とは、竹籠に和紙を貼って、柿渋を塗って仕上げるバッグのことです。とても丈夫で普段使いにピッタリですよ。」

 

 

――素敵ですね。和紙を使っている感じが昭和レトロな空間にもピッタリです!

 

 

3.昭和レトロで、「ワークショップ」

――さらに、この場所では大人の楽しいイベントを開催してくんですよね?

 

敬子さん:「そうですね。不定期ですが、知人の作家さんにも協力してもらってワークショップも開く予定です。子育て中のお母さんや日々頑張る女性を応援したくて。生きがいや日々の楽しみになるようなイベントを企画していきます。」

 

 

――敬子さんもワークショップをされるんですか?

 

敬子さん:「一貫張りのワークショップをする予定です。ちなみに、私が一貫張りを始めたきっかけは『本』だったんです。そして、やってみないとわからないことだらけだなって感じたんです。なので、ワークショップで気軽にモノづくりを楽しく体験できる環境を作りたいんです。」

 

――お仕事も趣味も、敬子さんがこれまで経験した苦労からこのお店づくりは始まっているような気がしました。

 

敬子さん:「そうですね。今回ド素人でカフェを始めますけど、本当に分からないことだらけです。キッチンが狭いということで増築することになりましたし、想定外なことが多いです。でも、モノ作りと場所づくりは似ているところがあるなと感じています。私たち親子と関わってくださる皆さんと楽しく、このお店をつくることでさらに希望を描くことができています。」

 

▼現在増築中(12月)

 

――オープンまで残り3か月ですね。順調に工事が進むことをお祈りしています!取材のご協力ありがとうございました!

 

敬子さん・みゆきさん:「ありがとうございました!」

 

 

 

 

◆おわりに

 

1.昭和レトロ大畑親子と出会って

今回、大畑親子を取材させていただき、お2人のお店づくりに対する情熱を強く感じました。想定外のトラブルも親子2人で前向きに捉え前進されています。不法投棄された築50年以上の空き家を選び、地域のため、人のために始めた「カフェ開業」は、敬子さんのみゆきさんに対する母としての思いやりも伝わってくる温かい空間です。また、敬子さんの「昭和は戸もあけっぱなしで寝よった時代」という言葉が印象深く、平成生まれの筆者もその時代の雰囲気をここで味わいたいと思いました。大畑親子がつくる『昭和レトロ』は、誰もがいつでもふらっと立ち寄れる地域密着のカフェです。オープン予定は4月。『昭和レトロ』の開店をどうぞお楽しみに。

 

 

“戸もあけっぱなしで寝よった時代”、「昭和」の面影を感じるどこか懐かしい「レトロ」な空間を目指して。

 

(2021年12月15日取材/早水奈緒)

 

 

▼周辺を流れる水路に沿ってお散歩も

 

 

▼『昭和レトロ』4月頃オープン予定

 

▼『昭和レトロ』大畑敬子さんInstagram

 

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