振り返れば一瞬のひと時…
「夏の海」
想像するだけで心が躍りませんか?
輝く海を前に、その憧れを叶えてくれる素敵な場所があります。
西方海岸の目の前。
車を降りるとやさしい波音が心地よく聞こえます。
手書きの看板。
象牙色の外観を眺めてうっとり。
高ぶる気持ちを抑え、中に入ります。
「あれはなんだろう?これはなんだろう?どうしてここにあるんだろう?」
どこか物懐かしい雰囲気の店内。
好奇心がそそられます。そして、膨らむ夢。
穏やかな雰囲気に包まれた、海風が爽やかに吹き込む海の家。
『ミチヨ食堂』
この空間を提供するのは、店主の徳永美千代さん。
西方町出身。
『ミチヨ食堂』を始めたのは今から6年前の夏。
きっかけは、“ひと夏の思い出づくり”
『長男と長女がもしかしたら家を出るかもしれないという時期でした。まだ決まってはいなかったんですけど…もしかしたら一緒にいられる最後の夏かもしれないと思って。そしたらちょうど同じ頃に知人から「海の家をやりたい!」と言われて。タイミングが合って、少しでも家族と一緒に過ごせたら良いなと思いお店を始めることにしました。』
家族と一緒に過ごすひと夏を最高の思い出に。
色々なタイミングが重なり『ミチヨ食堂』は始まりました。
『元々ここは空き家だったんです。廃材とか取り壊しする家からいらなくなったものを「ちょっと待ってー!これ欲しい!」と言って知人から譲り受けて(笑)だからここにはちょっと懐かしいものが色々あります。』
空き家をリノベーション。
美千代さんが知人から譲り受けたもの一つ一つがとっても独特!
元々は捨てられる予定だった一風変わったものが、面白く素敵に飾られています。
そして、店内を見回すと一際存在感を放つ個性的な楽器がありました。
『これは”トーキングドラム”という楽器です!こうやって脇の下に挟んで、ぎゅっと絞めたり緩めたりすると、表面のヘッドが伸びたり縮んだりして色々な音が出ます!』
と、軽く叩いてくれた美千代さん。
軽やかな高い音「トッ」から、海の中で聴いているような低い音「ドッ」まで。
心が躍るような音色が聴こえました。
そして、筆者も叩かせていただきました。
簡単に音を出すことができましたが、脇を絞めたり緩めたりしながら叩くのは少し難しく感じました。
トーキングドラムは,ふだんの生活で使われる言葉の中で,まるで音楽のように上がり下がりのある言葉の長短や強弱,高低などをドラムでまねして,聞き手に伝えようとしています。アフリカでは,トーキングドラムは「ブングング」と呼ばれ,伝えたい内容を伝達するための信号として使われていました。(後略)
【引用:教育芸術社「トーキングドラム」https://www.kyogei.co.jp/shirabe-sekai-b-03-html/】
(最終アクセス2021/8/13)
そんな美千代さんが民族楽器と出会ったきっかけは、
『MISHIMA CUPヨットレースっていうのが鹿児島であるんですけど、以前ボランティアで参加したことがあって。その時に、ジャンベの神様と言われている“ママディ・ケイタ”が演奏のために来日していたんです!それで、たまたま彼の演奏を聴いて、これだーって!!自分の中で運命に感じて!それから民族音楽が好きになりました!』
1950年8月生まれ、ギニア・バランドゥグ出身のジャンベ奏者。(中略)舞踏団の首席ジャンベ奏者として各国を巡って演奏活動を展開し、“キング・オブ・マンディカ”(アフリカで最も偉大なドラマー)や“ジャンベフォラ”(ジャンベの神様)と称される。(後略)
【引用:TOWER RECORDS ONLINE 「アーティスト詳細 Mamady Keïta(Mamady Keita)」https://tower.jp/artist/189823/Mamady-Keita】
(最終アクセス2021/8/13)
ママディさんの生演奏がきっかけで、民族音楽の魅力に惹きこまれた美千代さん。
ここは、異国の雰囲気も感じられる場所なのです。
その異国の雰囲気はお料理からも。
ジャマイカのソウルフード!
看板メニュー『ジャークチキン』
スパイスをオリジナルブレンド。
隠し味は、甘みのある「西方の塩」ときび砂糖。
一口食べると肉汁がじゅわっと溢れ、表面の焦げ目がまた良い風味を引き立てます。
お子様も食べられる甘口の『ジャークチキン』です。
そんな看板メニューが誕生した秘話。
『知り合いとBBQをしたときに、そのうちの一人がジャークチキンを持ってきたんです!最初、「え、ジャークチキンって何?!」ってなって(笑)でも食べたら超美味しくて!あの時の感動をみんなにも伝えたい!と思ってメニューに取り入れました!』
メニューにはほかにも、タイのソウルフードであるガパオライス、スパイシーオムライス、タイチャーハンがあり、まるで異国に来たかのようなお料理を楽しむことができます。
そして、美千代さんがこれからも大事にしたいことは、
『やっぱり一番は、人と人との繋がりを大事にしていきたいです。そして、一度西方の海に来てほしいなと思います。こんなに良い町がありますよ!って、西方をもっと知ってもらいたいです。みんなで幸せになれたらさらに良いですよね。これからも人と人が出会う場として、ゆっくりとこのままお店を続けていきたいと思います。』
人と人が繋がる場所。
西方の海、穏やかな雰囲気に癒されに来てほしいと話します。
そして、ここは地域の方からも愛される大人の溜まり場でもあります。
美千代さんが小さな頃からお世話になっているという男性と出会いました。
(ミチヨ食堂テラス席にて)
美千代さんと談笑するのが日課だそうです。
煙草を片手に静かに海を見守っています。
そして、美千代さんと軽く挨拶を交わす女性も。
荷物を抱えて早足で向かう先は…
「海を眺めながらご飯を食べるのが夢だったんです!」
女性は手作りのおにぎりと卵焼きを美味しそうに頬張りながら海を見つめます。
この日、念願の夢がやっと叶ったそうです。
筆者もしばらくの間横に座ってお話をしました。
ここに来なければ、素敵なお二人と出会うこともありませんでした。
美千代さんがお店を始めて6年。
きっかけは、家族と過ごす夏の思い出。
そんなひと夏の思い出が今日もずっと続いています。
異国の香りに包まれ、西方の海と人を繋ぐ場所。
『ミチヨ食堂』
皆さんもぜひ、ひと夏の思い出に。
それでは!
◎ミチヨ食堂
薩摩川内市西方町1210-7
営業日につきましてはSNSをご覧ください。
【Instagram】
https://www.instagram.com/michiyotokunaga
【Facebook】
https://www.facebook.com/nishikatashokudo/
(2021年7月21日取材)
文:早水奈緒