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作り手と買い手を繋ぐ架け橋に。 【さつま町・堀之内酒店】三代目店主の想い

一番最後に『酒屋』に立ち寄ったのはいつだっただろうか。
近頃は昔ながらの酒屋さんというものを見かけることも次第に少なくなってきた気がする。
今やスーパーやコンビニ、酒のディスカウントチェーン店、はたまたドラッグストアでもお酒を手に入れられる時代になった。
そう言えば便利な世の中になったものだと喜ばしくも思えるかもしれないが
一方で少し寂しさも感じる。

しかし町の酒屋も進化を遂げている。

【堀之内酒店】
昭和23年創業、七十余年にわたる経営を続けている老舗の酒屋は鹿児島県の北西部、さつま町宮之城屋地に位置している。

昔ながらの風体を残したレトロな造りの建物、しかし店に入りスピーカーから流れてくるのは、ジャズのメロディ。
店内には、本格焼酎をメインに日本酒・オーガニックワイン・ジャパニーズウィスキー……
一般的な小売店では見たことのないようなラベルの珍しいお酒が並んでいる。

かつて私が訪れた酒屋というと陳列棚はグレーの棚、P箱に積まれたお酒たちを店に所狭しと並べているイメージが記憶の奥底にある方も多いと思うが、
堀之内酒店のお酒たちは行間を大事にしつつ並べられているように映った。

【並んでいるお酒は、蔵元から預かった大事な子どもです】

そう語る三代目店主の堀之内力三さんは昭和53年生まれの今年43歳。
小学1年生から兄弟の影響で柔道を始めて、高校生からはレスリングに転向。
大学に進学しレスリングを武器に活躍していたが、度重なる怪我が原因で
引退し就職。
就職先の企業でレスリング倶楽部を発足させ業務と小・中学生のアスリートたちの育成を両立させる日々を送っていた。
平成16年ご尊父の他界をきっかけに堀之内酒店を継ぐ決意をした堀之内さん。

当初はかなり悩んだという。
お店をどうすればいいのか、と日々考えていた堀之内さんにひとすじの光明を
与えてくれたのが同じくさつま町にある蔵元『小牧醸造』の皆さんとの出会いだったという。

「蔵元での研修の中で、蔵元の方々と飲んだ焼酎が
これまで飲んだどんなお酒より格別に美味しく感じたんです。
人、場所、風景がお酒をこんなにもおいしくさせるのだと」

この時、堀之内さんは驚きと感動を覚えたそうだ。

【蔵元思いを伝えてくれる売り手、美味しさを伝えてくれる売り手に売ってほしいと願っているはず】

堀之内さんはその感動を蔵元の方やお客さんと共有しなくては!
そんな思いから今の店づくりに着手し始めた。
全国の蔵元を巡り、蔵元と何度も何度も『対話』を重ね勝ち得た信頼で、お店には他の店にはない珍しいお酒が並ぶようになった。

「蔵元にとってお酒は手を懸けた子供のようなものである、
大事にしてくれる売り手に売ってほしいというのはごく自然な流れだ。」

堀之内さんは力強く語った。

【アイデアの源は 今自分に何ができるのか】

通常思い描く酒屋との差別化に成功した堀之内さん。
そのアイデアはどこから湧いてくるのか尋ねた。
帰ってきた言葉はいつも自分に今何ができるのかを考えること、そう答えてくれた。

(▲取り組みの一つ。月一回必ず発行しているという新聞にはその月イチオシのお酒を紹介している。)

アイデアは酒屋の経営だけにとどまらない。
堀之内さんはさつま町への郷土愛が非常に深い。
地域のため、ひいては自分たちさつま町に暮らす人たちのため日々奔走している。

その一つが、『19歳の焼酎プロジェクト』だ。

毎年新成人に自分の焼酎を作り同窓会で飲むという焼酎に新たな価値を加え、新しいお酒の楽しみ方を生むというもの。
【主な流れ】
11月新成人がイモの収穫と仕込みを行う

12月、一人一人が思い思いのラベルをデザインする

1月さつま町成人式

同窓会でその焼酎を飲み語り合う

5月に来年の新成人のためイモを植えて循環させる

という毎年100人ほどの新成人が参加する一大プロジェクトだ。
焼酎を町のみんなで作っている、町のみんなで関わっていくという姿勢が感じ取れる。

最後に今後の展望について伺った。

「お酒を通して人と繋がることがメイン、生産者とお客さんを繋いでいきたい」

そう語った堀之内さんの頭の中にはおそらくアイデアが次から次へと溢れているのだろう。

 

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堀之内酒店(HORINOUCHI LIQUOR)

〒895-1803
鹿児島県薩摩郡さつま町宮之城屋地2775-4
☎(0996)53-0206
HP https://shochu-tairiku.com/●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●