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【クラフトビール SATSUMA SENDAI】地元に愛されるビールを作りたい~発酵に魅せられて~

創業明治38年の薩摩川内味噌醤油株式会社が新たに設立した
「薩摩川内クラフトビール醸造所」
ビールと味噌と醤油……?
どう関係するの?そう思う方も少なくないと思われる。
その共通点は【発酵】。
この【発酵】という共通点に魅せられた味噌と醤油醸造の職人が
伝統と精神を引き継ぎ、地元に愛されるビールを作りたい、と
クラフトビールを醸造した。


(クラフトビール/SATSUMA SENDAI:\660-税込)
取材日の5月22日現在は市比野道の駅前のマルニ味噌ラーメンの
店舗内にて注文可能。今後は持ち帰りも可能になる予定もあるそう。
実は……本当に隠し味!マルニさんの醤油もはいっているのだ!!
これは驚き。


開発者の岩永さん、ビールを作りたいという思いがあったのに、
どうして薩摩川内味噌醤油株式会社に……?
そんな疑問を投げかけると返ってきたのは「発酵が好きなんです」という言葉。
ビールを作りたいという想いがずっとあったという。
そんな想いが実を結び「やってみなさい」という後押しの言葉と共に
クラフトビールの製造に乗り出すことになります。

岩永さん曰く目指したのは「食中酒として食べ物を邪魔しないビール」
ご飯と合わせて飲んでも食事を邪魔せず、さらに濃い目の味の傾向にある
鹿児島の食卓にも合うようなさっぱりした華やぐ香りのビールだったという。

醸造所は市比野の直売所横にある。

 

秘密の部屋さながらの扉の向こうには麦芽を粉砕する部屋が…。

挽く前の麦芽。
そのまま食べてみる。
これだけでも意外に美味しい。
どこか香ばしく麦芽もおつまみにしてもいいのではと思うほど。
聞くと煎られた状態のものだそうだ。


その麦芽を機械で細かく挽いたり、少し殻の部分が存在感を残しつつ挽いたり。
その挽き方でも味わいに影響するという。


(左から お湯タンク 煮沸タンク お湯と麦芽を攪拌するタンク)
まずはお湯を沸かし
一番右のタンクに麦芽と沸騰したお湯とを混ぜて一時間じっくり混ぜ続ける。
ちなみに手作業で、大きなしゃもじでひたすら混ぜる。
そうしてできた麦汁を今度は真ん中のタンクでホップを入れ煮沸します。


そうしてできた麦汁を続いて発酵タンクに移し替える。
薩摩川内クラフトビール醸造所のタンクは現在2つ。
(1タンクで約300L/商品750本分くらい)

取材時は酵母を投入し発酵をさせ始めて3日目。

発酵させている最中ということで少し取り出してもらうと泡がすごい!
香りもしっかりしていて奥にバナナっぽい香りと白ワイン系の豊潤な香りが。
ここでは、高温で短時間でしっかり発酵させてすっきりした感覚と香りを
引き出しているのだそう。

しっかりと温度管理された中で出来上がったビールは酵母が残って
瓶の中に沈殿する白っぽく濁った少し珍しいタイプのビールだ。

【醸造家おすすめの飲み方】

①瓶の半分くらいの量をグラスに注いで飲む
②瓶の残った半量残ったビールと沈殿した酵母を優しく混ぜるように
瓶を回す
③残りのビールを注いで香りと酵母の濁りを楽しみながら飲む

という味変可能なビールなのだ。


飲めば一瞬、かもしれないが作るまでに発酵させるにも20日~25日かかる。
手間ひまかけて、大事に大事に作られたビール。
「ビールを通して薩摩川内市を元気にしたい。地元の人に愛される
ビールを作っていきたい」
という田所さんと岩永さんは今後、味噌ラーメンにあうビールも開発中だとか。
ビールを通した【発酵】への挑戦は終わらない。

(取材2023.5.22 文・写真 加藤知衣子)