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祝ウインターカップ2021出場!れいめい高校男子バスケットボール部

高校バスケの最高峰、ウインターカップ(第74回全国高等学校バスケットボール選手権大会)への出場をかけた鹿児島県予選。夏のインターハイ予選出場辞退という苦難を乗り越え、れいめい高校男女バスケットボール部が揃って優勝し、全国への切符を勝ち取りました。好敵手・川内と最後までしのぎを削った決勝を振り返り、本番へと向かうれいめい高校男子バスケットボールをレポートします。最後に、学校法人川島学園れいめい中学校・高等学校、徳留秀樹学校長に生徒と共に乗り越えたこの半年を振り返って頂きました。

全国の舞台へ!ウインターカップは5年ぶり14回目の出場となる、れいめい男子。

練習後のリラックスタイム

川内とれいめいの決勝、今季は南九州四県対抗予選決勝以来の対戦となった

昨年は準決勝で鹿児島工業に延長の末敗れ、2年ぶりの決勝進出となった川内。インターハイに続き、冬の全国大会も狙いたい。れいめいは昨年に続いての決勝。昨年の準優勝から頂点へと駆け上がれるか?インターハイ後、主力の3年生が数名引退した川内に対し、れいめいは春から同じメンバーで臨む。事前の予想は五分と五分。チームの総合力が問われる試合となった。

れいめいのスタートは0番小村、1番プライス、14番末原、23番キャプテン君野、29番髙城。対する川内は13番東後藤、24番川畑汐音、30番種子島、32番川畑駿介、33番岡元。立ち上がりから両者気合いの入ったプレーで点を取り合い、互角の戦い。1Qを終えて川内22-24れいめい。それぞれの得点源にはフェイスガード、マンマークを繰り出し自由にプレーさせない。川内はエース東後藤が量産体制に入れば、れいめいはプライスのインサイド、髙城のドライブなどで対抗。高さで上回るれいめいがリバウンドで優位に立ち、やや押し気味に試合を進める。川内42-47れいめいで前半終了。

後半に入っても一進一退の攻防が続き、3Q終えて川内61-67れいめい。川内はオールコートディフェンスでターンオーバーを誘い点を取るものの、その差はなかなか縮まらない。れいめいの激しいマークからフリーになろうと動いてきた川内に、やや疲労の色が見え始めていた。れいめい6点リードで迎えた第4Q、夏の王者川内が必死の追い上げを見せる。東後藤はこのクォーターだけで13点を挙げるなどシュート、ファウルを得てのフリースローでじわじわとその差を詰め、残り6.2秒、ついに85-85の同点に追いつく。両陣営とも小刻みにタイムアウトを取った最終盤、決着はつかず、そのまま5分間のオーバータイム(OT)へ。

さまざまなドラマがあった今シーズン。クライマックスにふさわしいゲームとなった

試合開始時と同じメンバーでOTスタート。先手を取ったのはれいめいだった。インサイドの大黒柱プライスの得点を皮切りに、髙城のエンドワンで畳み掛ける。川内もマークを振り切って川畑汐が得点を挙げるなど、なんとか離されまいとする。OTの半分を残し、ゲームをコントロールしてきたポイントガード髙城が個人ファウル5つ目で退場。川内に流れが傾きそうなところを、代わって入った3番東園、20番川井が落ち着いたボールさばきを見せ、ゴール下でパスを受けた小村が連続得点。戦いの果て、静かにしかし確実に、終止符を打った。91-95で試合終了。両校への拍手と興奮に包まれながら、選手は互いの健闘をたたえ合った。

女子、男子とそろい踏みで優勝したれいめい。男女ともに昨年の準優勝から見事に階段を登った。

君野 碧 キャプテン(左)プライス叙珠亜 副キャプテン(右)

ウインターカップ予選の余韻が残る11月はじめ。和田玄太 監督に話を聞きました。

-予選を振り返って

「生徒勧誘の仕事などがあり、まだゆっくりと見れてはいませんが、周りの方からは『感動した』『おめでとう』という言葉をたくさん頂きました」

-ノーシードの戦いとなった予選。ひとつ山場となるのが準々決勝の池田戦でした。どういう準備をされましたか?

「大きなポイントだったので、自分たちのやるべきこと、相手がやってくるだろうことへの対策は準備しました。 20‐6の立ち上がり(1Q終了時)もう少し離せたら良かったのですが、2Qは1点差まで追い付かれた。崩れても10点~15点リードは取れると思っていたが、ファウルトラブルや本調子が出ないなど、我慢の展開でした。後半の仕掛けがうまくいき、点差がついて、いろんなメンバーも使えたことが収穫でした」

-ガード陣が好調でした。東園や村田にも自信がみえた

「そうですね。特に3年生の東園、川井、武田はベンチでいい表情をしていて、起用にこたえてきっちり仕事をしてくれました」

-決勝のゲームプラン、指示は。

「バランスが良かったですし、みんな気持ちが入っていました。池田戦の反省をふまえて、川内にも夏から残った3年生がいるから容易ではない。最後の気持ち、気迫が出てくるだろうと。気迫、気持ちここで負けないようにと意識してゲームに入りました。川内は予想してはいましたが、東後藤くんが想像以上に良かったですね。こちらもスコアさせないために頑張ったが、思いのほかやられました。東後藤くんが決めるのはある程度しかたがないと、その次、川畑汐音くんには決めさせないようにと。スリー1本目決めたあと、フェイスガードをさせるなど徹底しました。エントリーで崩そう、PGの種子島くんについて自由にさせない、スコアラーにプレッシャーをかけること、粘り強くDFして体力を奪う、走り合いをさせようと。ゴール下シールしていくプレイ、インサイド岡元くんのところが前半で2ファウルになってたので、そこを突く。チームとして意思統一できていました。選手たちもよくコミュニケーション取っていましたね」

-延長へともつれて

「スカウティング、作戦は準備しましたが、何より重要だったのは、インターハイに出られなかった思いを忘れずにやれるかどうか、でした。苦しい思いを経験したのはうちしかいない。それを共有した仲間と最後まで頑張ろうと奮い立たせました。本心は突き放して4Qで決めたかったですが…まだタイムアウトも残っていたので、ここで無理に攻めにいってミスが出てしまうよりは延長になってもいいと。OT狙いではなかったが、5分で勝ち切ってくれるだろうと、期待しました。(オーバータイム、PG髙城がファウルアウトした時点で)4点差あったから、守り切れるしいけるかなと、3年生を信じて出しました」

「選手たちは、本当に粘り強くなったと思います。隔離・待機の期間を我慢した子たちだから。あって欲しくない、誰にもこんな経験をして欲しくはないが、あの経験はマイナスにならない、と。プラスにもっていけたのは大きいです。川内とは決勝でしか当たらないというのは分かっていたので。川内の田中監督も東後藤キャプテンもインターハイ予選、本選と『れいめいのために頑張る』と言ってくれました。その相手と決勝で戦えたというのは、とても感慨深いです」

-インターハイ予選は新型コロナウイルスの影響を受け、大会まで1週間を切った時点で、れいめいは男女ともに出場辞退となった

「難しい判断でした。子供たちはショックだろうし…仮に出られたとして、応援されるチームになれるのかと。辞退後はオンラインで面談などして心理的なケアをしました」

「ウインターに向けてやるしかない!と、選手も気持ちが向いていたので、できることをひとつずつやっていきました。(隔離期間を経て)全員が戻ってくるまで、見つめなおす時間が持てたと思います。時間も制限して1時間半くらいずつ学年練習をして、コミュニケーションを取り合いました。その後、サンアリーナせんだいのコートで保護者の前で学年対抗のゲームをして、いい節目になったと思います。夏合宿、遠征もできずじまいでしたが、スキル、戦術理解など自分たちのレベルを上げていこう、プラスのものを発信しよう、チームにとってプラスになることを言葉にして、態度にして表現していこうという雰囲気になってきました」

-迎えたウインターカップ県予選。ノーシードで1回戦からの戦いとなりました。

「初戦となった鹿児島高専もインターハイ予選に出場できなかったチームで、自分たちだけではないんだと。気持ちが入って、いい試合でした。続いて鹿屋、水産とやれたのは大きかったです。自分たちの設定した戦い方を全部じゃないけど、出来ていたので」

-池田戦を経て、みごと決勝に照準を合わせてきた

「そうですかね。選手たちの気持ちがぐっと入ってきた。決勝までこんなにドラマチックなプロセスがあって、延長まで戦って。どちらもすべてを出し尽くしたかなという感じはあります」

-5年ぶり(2016年以来)となる全国の舞台、どう戦いますか。

「今いる選手は全国大会の経験はない。それぞれ過去にジュニアオールスター、国体の経験はあるが、高校では初めてですね。これから全国で勝つための練習をしていきます。全国大会になるといろんな強度がまったく違うので、ディフェンスの強化、フィジカル面を鍛えないとですね」

「どこと対戦してもリードできる展開はほぼないだろうと思います。一瞬のスキを見抜いて突けるようになりたい。ゲームのなかで浮き沈みがあってはいけない。1Q、前半を自分たちのペースでやれたら見込みが出てくる。シュート確率を上げていきたいですね。対外試合がようやく出来るようになったので、これからやっていきます。全国でまずひとつ、勝ちたいです」

初戦は12月24日(金)栃木県代表・宇都宮工業が相手です。地元から熱い応援よろしくお願いします!

ウインターカップ2021/第74回全国高等学校バスケットボール選手権大会
2021年12月23日~29日 東京体育館/駒沢体育館

バスケットLIVE、スポーツナビ、J Sportsオンデマンド等でストリーミング配信予定です

徳留 秀樹 学校長

徳留学校長は自身も川内高校男子バスケットボール部でプレーしていました。川内の田中俊一監督とは同期で、それぞれ大学、社会人のバスケットボールを経験し、帰郷。田中俊一さんは川内を、徳留学校長はれいめいを率いることになりました。以後、同じ薩摩川内の良きライバルとして、優勝を分け合ってきた仲です。現在は、れいめい中・男子バスケットボール部の指導をされています。

-男女の決勝を振り返って

「何十年ぶりかの、というくらい良い試合でした。川内はインハイ王者として追われる立場でもあったでしょう、緊張感はあったと思います。夏は川内が『れいめいの分まで』と戦ってくれました。ライバルあっての試合、互いに敬意を持って戦う相手がいるという幸運です。戦う場所にも行けない時もあるわけだから…。いろんなところでいろんな方に評価して頂けて有り難いです」

「女子は中学女子、中学男子、高校男子(Bチーム)と校内で充実した練習ができていましたね。身長がある、コンタクトが強い、スピードがある、などカラーの違う対戦相手でどんな相手がきてもこなせる自信がついたかなと思います。決勝まではやや出来すぎ、決勝も主導権を握り優位に進めていたが、プレッシャーもあったかな。運動量で負けない、リバウンドも見極めて上手に処理していた。女子ではあまり見ないようなプレー、例えばタップして押し込むシュートなど練習が活きたかと思います。1年生の頑張り、PG岩下のコントロールが素晴らしく、いい試合ができたと思います」

-インハイ予選辞退を経て、得たもの

「一番は生徒とその家族を守らなければいけないと考えました。学校のことだけでは済まず、地域のこと、企業活動のことを考慮しなければいけない状態で、学校のウェブサイトに情報を公開しました。隔離期間の寮生・部活生には、OBOGの皆さんが差し入れ等で支えてくださいました。ほかの部活は夏で終わらざるを得なかった例もある。勝ったからといってワーワーできないよ、相手の気持ちも理解しながら、自分たちだけ良ければいいというのではだめですよと、選手には伝えました。卓球部などは最後の試合もできずじまいでした。なかには遠くかられいめいに行かせてくれたご家族もあります。当事者は何ともいえない…これも世のなかのひとつ、と」

-全国でどんな戦いを期待しますか

「体力、スピード、パワー、持ち上げないと全国でひとつふたつ勝つのは難しい。短期間の間に絞り込んで、身体づくり、走り込み、シュート力、磨きをかけて欲しいですね。男子は5年ぶり、女子はインターハイから2年ぶり、ウインターは初出場。女子は鹿児島県勢としての勝利もかかっています。男子は雰囲気に飲まれず、会場の雰囲気に慣れて、頑張ってほしいです。とにかく、いい経験を積んで、ひとつ勝ってほしい。揃って勝てたことは本当に嬉しかった。去年が揃って準優勝、今年が優勝。しっかりと階段を登ってくれた両チームです。応援よろしくお願いします」

取材・文/泊 亜希子