2021年4月28日。
東京2020オリンピック聖火リレーが行われていたこの日。
薩摩川内の街を巡ろうと走行中、道を間違えてしまった筆者は、たまたま通りかかった道で「なんだろうくん」と書かれた大きな看板を発見。
「“なんだろうくん”ってなんだろう?」
迷わず引き返し、お店を訪れました。
お店の前は4~5台停められそうな駐車スペース。
外から中の灯りが見えました。
「こんにちは~」
『・・・』
(誰もいない…?)
声を掛け続けるとキッチンから奥さんが。
窓側の席へと移動し、味のあるソファに腰掛けました。腰にフィットする素晴らしい座り心地。
外から光が程よく入り、いたるところに植物が。
奥さんがメニューを持って、
『うちはピザしかないのよ。ごめんなさいね。』
と、なんだか申し訳なさそうなご様子。
どうしてだろうと疑問に思いながら、メニューを開くとなんとビックリ25種類!
今回は“ミックスピザ” Sサイズを注文!
ピザを待っている間、あることに気づきます。
とっても静か!
なんだか新鮮な気持ち。
奥さんが支度をする音。
外からは鳥のさえずりも。
15分ほどで焼きあがったピザが運ばれてきました。
(アイスコーヒーと一緒に♪)
『食べきれなかったらお持ち帰りもできますからね。』
と声をかけていただきましたが…
ピザの後味をコーヒーがさっぱりさせてくれる感じがくせに!
Sサイズでもボリュームがありお腹いっぱい!
珈琲との相性が良くぺろりと完食!
これから珈琲とピザの組み合わせにもっとハマりそうです…。
美味しくいただいた後は奥さんとお話しをしました。
「お店の名前、なんだろうくんの由来はなんですか?」
『良い運が入ってくるように、最後に「うん」を付けたかったんです。それで主人が“なんだろうくんはどう?”と何気なく提案したのがそのまま気に入ってお店の名前になりました。(笑)』
一度聞いたら忘れないインパクトのある名前「なんだろうくん」
私もその運に導かれて来た一人なのかもしれません…
1986年創業。
多くのお客さんに親しまれてきたお店。
お客さんから「なんだろうくん」と呼ばれていた旦那さん。
実は二年前に突然倒れ、亡くなられたそうです。
旦那さんとのあまりにも突然すぎるお別れ。
『本当に病気をしない人だったので、いつもの調子で冗談を言っているのかと思いました。最期の言葉も聞けず、突然でした。』
二か月間お店を休業し、お店には奥さん一人。
キッチン業務は旦那さんがされていたため、何もかも戸惑うことばかり。
それでもお店存続のため、メニューを減らし営業再開。
それが今のスタイルに。
『久しぶりに来られるお客さんに必ず、“あれ、メニューが少ないじゃないか” と言われますね。昔は定食とかもいっぱいあったので。』
と、奥さんが話した時、数十分前の言葉を思い出しました。
“うちはピザしかないのよ。ごめんなさいね。”
違和感を覚えたその表情と言葉の裏には、奥さんにしか分からない複雑な心情があったのです。
結婚を機に薩摩川内市へ来られた奥さんのご出身は種子島。
故郷での思い出を楽しそうにお話しされる目はとても輝いていました。
グーグルマップを使い以前住んでいた西之表の町を一緒に散策!
風景は変わっても、楽しい思い出はずっと心の中に…
状況が突然変わっても、葛藤や苦悩を抱えながらお店を守り、続けてきた奥さん。
画面を見ながら故郷を懐かしむ奥さんを見て、心から溢れる感情がありました。
「奥さんのお名前、お伺いして良いですか?」
『なんだろうくんって呼んで!』
「なんだろうくん!」
ずっと笑顔だった奥さん。
最後に涙を流しながら、
『私ね、なんだろうくんがいなくなってから時々変になるの。沢山話聞いてもらって嬉しかった。ありがとうね。』
このご時世だから、心でぎゅっとハグをしてお店を後にしました。
翌日、4月29日は結婚記念日。
一日一日をコツコツと歩む奥さんを知り、私も頑張らなきゃと思いました。
悲しみは埋まらないかもしれないけれど、確実に一歩一歩前へ進む。
「なんだろうくん」と出会えてよかったです。
旦那さんと歩んできた日々を明日へと紡ぐ。
皆さんも是非、『珈琲&ピザハウスなんだろうくん』に行かれてみてくださいね。
それでは。
(2021年4月28日取材:早水奈緒)
◉『珈琲&ピザハウス なんだろうくん』
薩摩川内市国分寺町7062-2
0996-25-1717
営業時間
※11:00~21:00
(その日によって開店・閉店時間が異なります。)
※ピザのテイクアウト等のご予約はお早めに。
※年中無休
https://goo.gl/maps/8Eg3BaNCSbGLqxn38