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エールキャラバン in 鹿児島純心女子高校新体操部

2020年東京オリンピックに向け、その輝かしい舞台へと進む現役高校生に各界の著名なアスリートが直接、講演や部活指導を行うエールキャラバン。鹿児島純心女子高校新体操部に、フェアリージャパンとして2大会連続オリンピックに出場、中心選手として活躍した畠山愛理さんが訪れました。

2019年南部九州総体、地元鹿児島開催で準優勝を果たした鹿児島純心・女子体操部。古豪復活を印象づけました。

会場に現れた瞬間、ワーっと上がる歓声。優しい光に包まれているようなオーラがあります。

リボンを手にくるくるっと実演してみせる畠山さん。「リボンがまるで生きているように、ピンっとしてないとだめなんですね」「誰かひとり!やってみたい人」と呼びかけ、実際に生徒さんも体験。6メートルもあるリボンを地面につけずに扱うのは見た目以上に大変です。「もうひとつ、柔軟をさせて頂きますね」と畠山さん。笑顔で足を上げていきます。「よく180度といいますけど、、それ以上じゃないと」と、どんどん足を上げて開いていき、270度近い開脚に、会場からは思わず悲鳴とため息がもれました。

兄ふたりに囲まれて小さいころからとても活発だったという畠山さん。母親のすすめで、バスケ、バレーボール、水泳、バレエといろんなスポーツに挑戦したそうです。そのなかで特に惹かれたのが新体操でした。修学旅行よりも練習を取るほどにのめりこみ、小学6年生の時に全国大会で決勝進出、6位入賞を果たします。そのころに抱いた夢が「オリンピックに出たい」。夢を実現するために、さらなる努力を重ねていきました。

ところが、ここから畠山さんを試練が襲います。極度の貧血、腰の分離症と、練習どころか日常生活もままならないほどに身体は悲鳴を上げていました。「ハードな練習と、体重制限のある競技ということもあり、そのころの食事が原因です」。ドクターストップがかかる事態にも関わらず、ジュニアの全国大会に強行出場をすすめるコーチと意見が合わず、中学2年生の畠山さんは自身の決断で出場を見送りました。そのこともあり「中学3年生の時には練習に行っても指導してもらえない、練習に向かう途中に気分が悪くなり吐いてしまう、といった状態でした」と畠山さん。「あんなに好きだった新体操を嫌いになるなんて。そのこともショックでしたし、やめようかなと悩みました」

その時、畠山さんの支えになったのが保健室の先生の励ましと、かつて自身が卒業文集に書いた「夢」でした。ちょうど女子新体操「フェアリージャパン」のメンバーを選ぶオーディションが開催されることになり、「これで落ちたらやめよう」と選考にのぞんだ畠山さん。見事合格し、その3日後には合宿地のロシアへと旅立って行きました。「代表選手の生活は、1日に8時間から10時間の練習、350日は共同生活です。1年の半分はロシアで過ごしました。大変なことはたくさんありましたが、どれも自分が強くなるためのチャンスだと思ってチャレンジしました」。ロンドン五輪団体7位、リオデジャネイロ五輪団体8位と2大会連続で入賞をおさめ、引退。現在はフェアリージャパンアンバサダーとして新体操の魅力をひろく伝え、後進の指導にあたるなど活躍の場をひろげています。

穏やかな笑顔の陰で、大きな試練や挫折も味わってきた畠山さん。高校生に贈った言葉は「自分らしく、背伸びせず」。幾多の試練を経て「ありのままの自分を見てください」という心境に至ったそうです。美を追求し、常に人の目にジャッジされる競技において、自分の心を見つめ、拠り所にしてきた畠山さんならではの境地かもしれませんね。

講演後の生徒さんとのQ&Aをご紹介します。

-高校時代にやっておいて良かったなと思うことを教えてください

「自分の気持ちを書く、ということです。日記を毎日書いていて、言葉にすることで客観視できる。後から振り返って、自分のノートに助けられたことが多かったです」

-食事で気をつけていること、美肌の秘訣は何ですか

「バランスの良い食事をとること。量を減らすのではなくて、質を変える」
「美肌の秘訣は、汗をかくこと。なるべく動いて汗をかく。動けなかった日はお風呂に浸かる。野菜をとってビタミンを摂る」。美に王道なし、ですね。

大塚製薬さんによる「秋冬の給水」についてのミニレクチャーも。空気が乾燥するこれからの季節、こまめな給水で喉や気管支を潤しておくことが、風邪やインフルエンザ対策にも効果的です。汗をかきにくい季節だからこそ、意識的に水分をとってください、とのお話でした。

講演後、新体操部の指導がスタート。タオルを足裏でたぐり寄せるトレーニングから始まり、柔軟体操、ストレッチと丁寧に指導していきます。

畠山さんの見せるお手本の美しさ。筋力の弱い部分がすぐに分かってしまうトレーニングです。

「つま先、つま先、つま先!」そうそうそう、と指導も熱を帯びていきます。

「自分に厳しくね」と畠山さん。「指導者がすべてを見れる訳ではないので、最後差をつけるのは自分にどれだけ厳しくできるか」という思いがあるそう。

ジャグボトルにサインを入れてプレゼント

部員ひとりずつにボトルを手渡す畠山さん。感極まって涙する部員をそっと抱きよせるシーンも。

「帰り難いな~」と部員との別れを惜しむ畠山さん。美を競う新体操の世界から現役を退いたいま、畠山さんの思う美しさとは何か、たずねました。「美しさとは。。ロシアに行って練習をするようになってからは、練習だけではなく私生活とか、心の部分も含めて美しくなれるように心がけることが重要だと思うようになりました。結局は気持ち、なのかな」その答えは、この日の畠山さんの講演・部活指導を通して、生徒や部員にしっかりと伝わっていたように思います。

新体操強化本部長である山崎浩子さんの母校としても有名な鹿児島純心女子高校・新体操部。地元開催のプレッシャーのはねのけ、守りに入らず攻めた演技で準優勝に輝いた今年から来年、かごしま国体でのさらなる飛躍が期待されています。畠山さんの言葉を胸に、自分らしいありのままの演技で輝けますように。

取材協力
鹿児島純心女子中・高等学校新体操部
大塚製薬株式会社 鹿児島出張所