アーカイブ

藺牟田の田の神もどし2017

4月10日、今年も祁答院町藺牟田の2地区で伝統行事『田の神もどし』が行われました。

P_20170410_142754

手にしゃもじ、人懐っこい顔とユーモラスな姿「田の神さぁ」は、薩摩川内市内のいろいろな場所にいらっしゃいます。
本来は田んぼに立つ五穀豊穣の神様です。
祁答院町藺牟田の麓集落と中原新屋敷集落では、子孫繁栄を祈り、新婚夫婦の家に田の神さぁを一年間招き入れ、春になるとお引っ越しをする行事『田の神もどし』が伝統行事となっています。

今年は、麓集落の様子を見学させていただきました。
いつもならこの時期には見頃を終えている桜が、今年は開花がゆっくりだったので咲いていました。
あいにくのお天気でしたが、伝統行事はしっかりと行われます。

P_20170410_143007

田の神さぁを預かる家は宿(やど)と呼ばれます。
宿になるのは、原則は新婚家庭ですが、
少子高齢化の影響もあり、最近麓地区内で結婚あるいは出産などのおめでたい事がなく、やむなく地区内には居住していないが、身内で結婚・出産などの慶事があったところに引っ越すということもあります。
数年前には、なかなか引越し先が見つからず同じ宿に2年間お世話になったこともありました。

4月10日
一年間、田の神さぁと過ごした宿では、一年の感謝を込めて田の神さぁを洗い、お化粧をします。
山吹の花・八重桜・野菜の花等で飾られた青竹で編んだ籠に入れられて次のお宿へ運ばれていきます。
小豆を混ぜた餅を、藁苞(わらつと)くるんだ物「田の神もち」 と、その日の朝に切った青竹に焼酎を入れたものを、麓地区の班数だけ籠に括りつけて、引っ越しの準備です。

P_20170410_152451

運び手たちは、地域の青壮年部のメンバーです。
田の神さぁの分身として、化粧をして女装をします。
竈のススを水で溶いたもので、通称へグロで、顔を真っ黒にして、カラフルな化粧を重ねていきます。
麦わら帽子、頬かむり、浴衣、袴、地下足袋を着用して、手には・しゃもじ、シュロを巻いた棒を持って準備万端。

P_20170410_150421

今までの宿・新しい宿はもちろん、地域の様々な場所で踊りを披露しながら引っ越しはすすんでいきます。
途中で立ち寄り踊りをするレンゲ畑は麓公民館の近くの田んぼですが、毎年ここ!と決めているわけではなく、レンゲ草の綺麗な(絵になる)ところを選んでいるそうです。

P_20170410_145813

踊りを見物していると、顔にヘグロをつけに田の神さぁの分身たちがやってきます。
逃げても追いかけるそうです。
地域の皆さんのなかには、子どもの頃、レンゲ畑を逃げまわった思い出がある方が多いようです。
このヘグロは神様の分身がつけているということで縁起のいいものとされ、つけられると一年間健康で暮らせるといわれています。

P_20170410_150451

P_20170410_150533

P_20170410_150622

 

新しい宿に行く前にたちよるのは麓公民館。

P_20170410_142812

この日にあわせて総会が行われ、終わった頃に、田の神さぁ御一行の到着です。

P_20170410_152350

公民館の広間の片側は畳をあげて板の間にして待っています。
そこで、踊りの披露をして、しばらくすると、また踊りの音がしてきました。
今日一日、田の神さぁと一緒にまわってきた田の神もちと青竹焼酎の出番です。
田の神さぁの分身たちが踊りながら、班の名前が書かれた青竹を掲げます。
掲げられた班の代表は、出てきて踊りをします。踊り終わったら、班のみんながいるところに戻って美味しく焼酎をいただきます!

P_20170410_152151

P_20170410_153328

P_20170410_154308

締めくくりは、新しい宿で踊りをして鎮座して、引っ越し完了です。

fumoto

(麓集落)

nakaharu

(中原新屋敷集落)

百聞は一見にしかず・・・ぜひ、来年の4月10日は藺牟田へ遊びにいってみてください。

P_20170410_150045

P_20170410_145901

(取材協力:藺牟田地区コミュニティ協議会