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東郷文弥節、人形浄瑠璃の世界(2)

前編では、「東郷文弥節人形浄瑠璃」とは?そして、なぜ薩摩川内市東郷に伝わり、守られてきたのか?についてお伝えしました。その歴史と背景をざっとつかんで頂いたところで、2018年11月25日に東郷公民館ホールで開催された公演と、伝統を支える保存会の皆さんをご紹介します。

人形浄瑠璃で使われる男人形と女人形

この日上演されたのは『源氏烏帽子折』から「常盤御前雪の段」と「鞍馬下りの段」のふたつ。『源氏烏帽子折』は4つのストーリーで構成され、それぞれ2話目3話目にあたります。平安時代末期、平治の乱に敗れた源氏。「常盤御前雪の段」は、源氏の大将であった源義朝(みなもとのよしとも)の妻、常盤御前と後の義経を含む子ら(今若・乙若・牛若)の逃亡劇にまつわる、人情物語です。

門と松に積もる雪。舞台の端に三味線奏者と太夫(だゆう)と呼ばれる語り部が座り、舞台の幕が上がります。

常盤御前と幼い子どもたち。雪の中、ひと晩の宿を請います。

門の向こうにいる白妙。源氏の出身ながら、いまは平家の武士の妻の身。常盤親子をかくまうことはできません。

寒さと疲れで倒れてしまう常盤御前に、子どもたちは着ている衣をかけて介抱します。そこに来たのは、この宿の主、平家方の宗清。常盤親子の運命やいかに?!…この続きはぜひ、実際の公演をご覧になってください。

幕あいに、浄瑠璃で使われる人形の説明がありました。男人形はひとりで操作、女人形はふたりで操作します。男人形は、顔と左手が動くのに対し、女人形は顔と両手が動くようになっています。手のひら、手の甲、どちらが上にくるか、どこに手を添えるか、顔の向きなどで、物語に沿って人形の心情を表現するのです。素朴なつくりながら、高度な技術が必要とされるのがわかります。

女人形の「泣き」

続いて「鞍馬下りの段」です。時は正月吉日。京都の烏帽子屋のひとり娘・東雲(しののめ)と、元服するまでに成長した牛若丸との出会いから始まります。

正月に羽根つきを楽しむ東雲と侍女

元服のための烏帽子を買いに来た牛若丸を見て、源氏側の若者であると見抜いた主人。密告して褒美をもらおうとたくらむが、、この後の展開やいかに?!…この続きはぜひ、実際の公演をご覧になってください。

最後は皆さん総出で「川内はんや節」の舞いを披露。

はんやのメロディにのって、リズミカルに動きます。会場の皆さんも手拍子を合わせ、一緒に盛り上がりました。

野久尾忠さんは保存会の中心メンバーのひとり。人情浄瑠璃にはなんと12歳の時から関わり、50年を超える活動歴とのこと。人形の操作にも熟練の技が光ります。「東郷文弥節は、もともとは東郷のなかでも、三ケ郷(さんがごう)と呼ばれる、小路(こうじ)、城内(しろうち)、谷之口(たいのくち)に伝わるものでした。今では東郷全体でこの伝統を守るために活動していますよ」とにっこり。

そして次代を担う子どもたちも、この伝統を支えています。現在4人の小中学生が活動に参加。成枝愛璃さんは入来中学校の1年生。人形浄瑠璃の三味線奏者でもある祖母に誘われて、活動に参加し始めたのだそうです。

来場者に人形の動かし方を見せる成枝さん

人形浄瑠璃の面白さ、大変なところは?「人形の作りが独特で、うまく操作できた時が楽しい。大変なのは、女人形は重たいので、ずっと持ってると疲れてだんだん腕が下がってくる、、ちゃんと持ち上げて!と言われます」なるほど、ずっと人形を持ち上げ続けて、舞台上の移動もありますから、なかなか大変そうですね。ちなみに女人形は5-6キロ、男人形は4キロほどあるそうです。また、2人組で操作する女人形の左手役は「前が見えないので、主の人に合わせるのが難しい」とのこと。「常盤御前雪の段」では、主役の常盤御前の左手を務めた愛璃さん。自然な動きができていたと思いますよ!

同じく子どもメンバーの藤田望さん(東郷小学校4年生)と。「鞍馬下りの段」では、侍女の主操作を成枝さん、左手操作を藤田さんのペアでやり遂げました。

東郷に伝わる文弥節人形浄瑠璃の世界。数百年続く伝統の背景を知り、公演を観覧したあと、実際に人形に触れたり、演者さんとお話をすることで、ぐっと身近に感じられるようになりました。ぜひ一度、この舞台を観覧してみてください。薩摩川内市東郷の興りから現在に至るまで、脈々と受け継がれてきた心意気を感じることができると思います。

次回公演は、2019年3月3日(日)東郷公民館ホールにて上演予定、「第8回おのぶっ祭」と同時開催です。お楽しみに♪

■東郷文弥節人形浄瑠璃保存会(東郷公民館内)
0996-42-0864